怠慢な経営陣、業界トップの驕りか
問題といえば、セブンペイのほかに、24時間営業の是非をめぐる騒動がある。今年2月に東大阪市のセブン-イレブン加盟店のオーナーが本部の同意を得られないまま時短営業を強行し、本部と対立。これが発端となり、営業時間の短縮や長時間労働の是正を求める声が強まった。
セブンではオフィス内や駅構内など一部を除いて24時間営業を原則としてきた。消費者 の利便性を高めるほか、終日営業を前提とした生産体制や物流網を構築してきたためだ。だが、深夜帯の需要減退や人手不足を背景に、営業時間の見直し機運が高まっている。
こうした状況に国も動き出した。経済産業省はセブンを含む大手各社に加盟店の経営環境を改善する行動計画をつくるよう求めた。経産省が昨年12月から今年3月にかけてコンビニ8社の加盟店オーナーを対象に実施した調査では、従業員の不足を訴える声が6割、フランチャイズ加盟に「満足していない」との回答が4割を占めた。14年度の調査と比べて悪化傾向がみられた。こうした状況を受け、経産省がコンビニ各社に異例の要請を行うに至った。
公正取引委員会も動き始めた。コンビニ本部とオーナーの関係の実態を把握するための調査を検討しているという。双方にアンケートを実施し回答によっては、独占禁止法に基づき審査することも視野に入れる。公取委は24時間営業について、オーナーが見直しを求めて本部が一方的に拒んでオーナーに不利益を与えた場合、独禁法違反の可能性が排除できないとの見解を示している。
こうした24時間営業をめぐる問題は、セブンに限った話ではない。ファミマやローソンなどを含めたコンビニ業界全体に共通する問題だ。しかし、世間の多くはこの問題に対する矛先をセブンに向けている。東大阪市のセブン加盟店が問題の発端となっていることや、セブンが業界最大手で批判を受けやすい立場にあるのは間違いないが、セブンの対応のまずさも批判を大きくしているといえる。
のらりくらりと対応してやり過ごせば、批判はすぐに収まると判断していたようにみえる。東大阪市のオーナーに対しては、当初は強硬姿勢を崩さなかった。時短営業については、ファミマやローソンが実験の規模を拡大する考えを示したのを受け、セブンはしぶしぶ実験に踏み切った。
トップの対応もセブンは後手に回った。ファミマやローソンはトップが早い段階でメディアのインタビューに応え、加盟店に寄り添う姿勢を示した。本音は24時間営業を維持したいのかもしれないが、見直す可能性を完全には否定しないなど改善に向けて動く姿勢をアピールし、加盟店と世論の懐柔を図った。しかし、セブンは長い間、頑なに24時間営業 維持の姿勢を崩さず、トップが改善策を示すこともなかった。これがオーナーと世論の強い反発を招いた。初動を誤ったといえるだろう。
24時間営業問題への対応とセブンペイの導入について、セブンの経営陣は何もかもがお粗末だった。業界最大手の“おごり”が垣間見えた。また、ヒット商品が長らく不在で、セブン“らしさ”も発揮できていない。こうした体たらくが続けば、“セブン王国”は崩壊しかねない。事態打開のために、強力なリーダーシップが求められている。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。