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また、VWのエンジニアは不正がここまで大問題に発展すると認識していなかったのではとの指摘もある。現在の自動車は電子化が進み、ECUによって排ガス量や燃費などを一定の範囲なら自由にコントロールできるようになっている。VWが犯した不正は、他の自動車メーカーでも「やろうと思えば簡単にできる」(自動車メーカー開発担当役員)手法だ。このため、VWの問題発覚後、BMWやダイムラー、マツダが相次いで「不正は一切行っていない」という異例のコメントを公表している。
多くの自動車メーカーにとって試練
問題のひとつに、排ガスを含めて自動車に関するさまざまなテストが、実際の路上走行ではなく、台上で、しかも一般的ではない走行方法で測定されることがある。いい例が燃費だ。自動車には、当局の試験を経てカタログ燃費が公表されているが、実際の走行における燃費と大幅に乖離していることはよく知られている。
カタログ燃費値はクラストップでも、実際の燃費ではほかのモデルより悪いことはざらにある。これは、燃費を測定する試験でエアコンを使用しないなど、実際の走行状況とまったく異なることが原因のひとつだ。エアコンオフの状態でクラストップの燃費になるように、ECUでコントロールすることは簡単にできる。
VWの不正問題を機に、当局は排ガスや燃費のテストの見直しを本格的に検討し始めた。欧州では、排ガス試験で実際の路上走行によるテストを導入することを検討開始。認証手続きも見直す。国連では、排ガス試験方法を統一するための話し合いが行われているが、ここにも今回の問題が影響を及ぼすとの見方は強い。また、米国当局はVW以外のモデルで不正なソフトが搭載されていないか検査する。
排ガスや燃費の検査が厳格化されテスト項目が増えれば、自動車メーカーにとって大きな負担になるのは確実で、自動車のコストアップにも結びつく。さらに、環境自動車として注目され、市場が拡大してきたクリーンディーゼル車のイメージ悪化も懸念され、低排ガス・低燃費のクリーンディーゼル車の開発に多額のコストを投じてきた自動車メーカーは試練を迎えることになる。
VWの不正問題は、制度の盲点をついていたことの悪質性から、「性善説」をベースとしてきた従来の制度の根幹を揺るがしている。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)
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