意識の高まりという副産物
では、副業のリターンとはなんでしょうか。筆者は、副業によって得られる報酬自体は最重視すべき項目ではないと考えています。
会社員の場合、「仕事を取る」ということの意識は、どうしても薄くなってしまいがちです。売上目標や受注に追いかけられる営業担当者であったとしても、目標に対して未達であったりゼロであったりしても、怒られたり賞与が少し減ったりする程度です。ところがもしも独立事業者であったならば、すぐに生活に支障が出るリスクが顕在化するために、その緊張感は比較になりません。そもそも会社員であれば会社の看板や組織の情報が当然のように存在して、それを生かしながら活動していますので、そうした組織の恩恵は、つい忘れがちになってしまいます。
副業として自分の経験や力、自分自身を商品にして売り上げを取ってこようとすることで、その難しさや会社組織のありがたみを実感できます。結果として会社員としての仕事にも緊張感が生まれ、同じ経験をしてもそこから得られる知見に深みが出たり、色々なことにチャレンジしてみたり、取引先や同僚との関係性を良好にしようという意志が強くなったりと、その後の仕事にも良い影響が出るのではないかと筆者は考えています。
当然ながらすぐにうまくいくはずもなく、金銭的に潤ったり本業に貢献したりするほどになっていくためには色々な試行錯誤を重ね、何年も時間がかかると思います。ただ、それと引き換えに、ある程度の基盤をつくることに成功すれば、会社員として定年を迎えたり、高齢になって外に追い出されるような目に遭ったとしても、仕事も収入もゼロになる事態を回避できますし、人生において仕事がまだまだ続いていくという展開を続けられます。それが何もない状況を想像して比較すると、早いうちから挑戦する価値はあるのではないでしょうか。
次回は「(2)日々を楽しくしたい、ストレスから解放されたい」という目標に沿った副業についてみていきたいと思います。
(文=中沢光昭/経営コンサルタント)