「羊は人類最古の家畜で、1万年前から食べている肉なんです。宗教上の規制もなく世界中で広く育てられていましたが、もともと日本には羊がいませんでした。日本では、第2次世界大戦のときに軍服をつくるために羊が飼育されるようになりました。つまり、羊が飼育されるようになってからまだ100年もたっておらず、羊に関して日本は後進国といえます」
戦後しばらく羊の飼育は続き、昭和30年頃までは日本の羊飼育数が90万頭以上だったという記録もあるが、昭和32年をピークに飼育数は減少していった。
ラムは世界では御馳走
日本でラムといえばジンギスカンが有名だが、このジンギスカンは北海道で生まれた日本料理で、リーズナブルな食べ物である。これに対し、諸外国ではラム肉はご馳走であり、お祝いや感謝祭などで食される高級品である。
「オーストラリアでは『ラック』といってロースに複数の肋骨を残したものを好んで食べます。美味しい高級部位以外は日本や中国へ輸出されているので、日本では当然安くなります。また、ラムは冷凍すると味が非常に落ちてしまいます。結果、日本では『ラムは安くて不味い』といったイメージがついてしまい、あまり広まらなかったというのが最近までの流れです」
冷凍しない生のラム肉は臭みもなく柔らかい。また、ラム肉のヘルシーさも人気が高まっている一因だ。
「ラム肉の脂の溶ける温度、つまり融点は44度。これに対し人間の体温は、36度前後です。そのため、人間の体温でラム肉の脂は溶けづらく、腸内に入った脂も吸収されにくいため、ほとんど体外に排泄されます。つまり、食べても太りにくいヘルシーな食べ物なんです」
かつての“安くて不味い”というラム肉のイメージは、今や“リーズナブルで美味しくヘルシー”というイメージに変わってきている。しかしながら、その美味しさを保つためには「鮮度が命」だという。
「私は、できるだけ生の状態で仕入れることにこだわっています。鮮度の良いラム肉を提供できれば、自ずとその美味しさも知ってもらうことができます」
チルドの状態で仕入れることにこだわり、ほかではなかなか食べられないラムのユッケは人気のメニューだという。
「羊を一頭買いし、すべてを無駄にせず大事にすることを心がけています。現在、19カ所の羊飼いと契約させてもらっています。私は、ラム肉の価値を知っていただきたいと考えているので、多くのお客様に来ていただけるように、2時間制での提供とし、羊の話をお客様にさせていただいています」
訪れる客の多くは、関澤氏やスタッフの羊談義とラム肉の味にすぐに羊SUNRISEのファンとなり、リピーターとなっている。さらに、口こみで評判となり連日、満席のにぎわいを見せている。