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日産、次期社長選びが混迷…支配狙うルノー派vs社内昇格組、日産の独立性を賭けた緊迫の攻防

文=編集部

内部昇格ではガバナンスの改革にならない

 外国人を含めた“ポスト・西川”の選出作業は、残念ながら急ピッチで進んでいるとはいえない。というのも、指名委員会のメンバーにルノーのスナール会長が入っているからだ。次期社長の候補と指名委員会のメンバーが会う、最終面接が必要になる。

 指名委員会委員長の豊田正和氏(経済産業省出身)が、最終面接をどこで行うのか、誰が出席するのかといった整理をすることになるとみられる。

 日程上の問題はともかく、10月末までに後任の社長を決めきれるのだろうか。さらに言えば、ルノー、日産の利害の対立を乗り越えて、統率力のあるリーダーを選ぶのは至難の業である。

 豊田委員長は“ポスト・西川”の条件として、「リーダーシップがあること」「世界の自動車産業に詳しいこと」「ルノー三菱自動車とのアライアンス(提携)に深い理解と関心があること」の3つを挙げた。

 指名委員会は候補者を100人超から10人程度に絞り込んだ。女性も外国人もいる。社内昇格なら有力候補は2人ないし3人だ。まず、2人の専務執行役員の名前が挙がる。

 一番手は経営再建(パフォーマンスリカバリー)担当の関潤氏(58)。防衛大学校出身という異色の経歴の持ち主だ。生産技術部門が長く、日産にとって今や米国市場以上に重要になった感のある中国で事業を率いて成功させた実績がある。

 もう1人は内田誠氏(53)。日商岩井(現双日)出身の転職組。ルノーとの共同調達を成功させ頭角を現した。海外経験が豊富で、関氏の後任として現在、中国事業を任されている。

 CEOを代行する山内氏も候補だが、「西川氏の側近というイメージが強い」(日産の幹部)ことが懸念点だ。「刷新」という、出直し人事の要素が強いだけに、日産社内からの昇格でいいのかどうか。「日産社内からの昇格ではガバナンスの改革にならない」(在パリの自動車担当アナリスト)というのがフランス側の見方だ。

 ルノー出身者や日産の役員OBも候補に残っており、残り1カ月半で、きちんと次期CEOを決められるのだろうか。時間を気にする向きもある。

「残り1カ月半、を強調するのは、社内昇格を考えている人たち」(別の日産幹部)というのが事実なら、日産の“社論”は内部昇格を望んでいることになる。だが、ことはそう簡単ではない。

「外部から招聘しないと、日産は変わったというメッセージは出せない」(ルノーに近い日産関係者)というのも一面の真実だ。

 異業種で実績をあげた「プロ経営者」を一本釣りできるほどの“目利き”が指名委員会のメンバーにいるのかも不安だ。

「日産が持っているカード(社内昇格組)と、ルノーのスナール会長を比べたら、スナール氏のほうが経営者としては一枚も二枚も上手」(外資系証券会社のアナリスト)といわれるなかで、究極の選択が行われることになる。
(文=編集部)

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