この中国での合弁事業には前澤氏は乗り気ではなく「検討する」と答えたら、孫氏が「何を検討するんだ。お互い社長なのだから、自分で判断できるだろう」と強く迫り、前澤氏が押し切られたという経緯がある。
「あの時、孫社長は将来的な“乗っ取り”まで計算して、中国合弁を勧めたのではないかと勘繰りたくなる」(前出のM&A会社トップ)
4段重ねの「親子上場」
「私はAI(人工知能)革命の指揮者になりたい」
6月のSBGの株主総会で、孫氏はこうぶち上げた。AI革命のチャンピオンになるため、投資会社に変容したSBGの傘下に置くグループ会社を再編した。
中核子会社のソフトバンクを東証1部に上場させ、ソフトバンクが6月にヤフーを子会社にした。ヤフーの親会社はSBGからソフトバンクに交代。併せて、ソフトバンクとヤフーが共同で出資するスマホ決済のPayPayはSBGの直轄事業となった。
孫氏には出資した中国のネット通販最大手アリババ集団での成功体験がある。アリババの事業モデルは、スマホ決済「アリペイ」を入り口に、ネット通販や金融サービス、各種の生活サービスに導かれる仕組みになっている。孫氏はアリババの取締役でもある。
SBGはアリババの事業モデルをそっくり真似する。PayPayを入り口に、ネット通販や金融サービスに導くというものだ。そのためにPayPayをSBGの直轄事業にして、子会社ソフトバンクがヤフーを子会社にした。
ヤフーの個人向けネット通販は、アマゾンや楽天に大きく水をあけられてきた。アマゾンや楽天に追いつき追い越すためにアスクルの個人向け通販「ロハコ」が欲しくなり、これに反対する岩田彰一郞社長(当時)の解任騒動に発展した。EC(ネット通販)事業をテコ入れしたい孫氏の意向を忖度して、ヤフーが強硬手段を採ったといわれている。
アスクル問題では「親子上場」が批判された。SBGが親会社、ソフトバンクが子、ヤフー改めZホールディングスが孫、アスクルとZOZOがひ孫会社の4段重ねの「親子上場」となる。