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水野誠「マーケティングの進化学」

アマゾン、圧倒的強さの秘密は「売れない」ニッチ商品の多さ?売上分布から解剖

文=水野誠/明治大学商学部教授

ビッグデータは「量」よりも「バラエティ」が重要

 本連載前回の記事で、ビッグデータ時代のマーケティングでは「全体」より「部分」、そして「代表性」より「詳細性」が重要になると述べました。その後、最近の米ウォールストリート・ジャーナルの記事で、同じことをデータベース・マネジメントの第一人者が主張しているのを知りましたので紹介したいと思います。

 その第一人者とは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でコンピュータ・サイエンスと人工知能を研究するマイケル・ストーンブレーカー教授です。2014年にコンピュータの世界におけるノーベル賞といわれるACMチューリング賞を受賞している斯界の世界的権威。そんな教授が、ビッグデータで大事なのはデータの「量」ではなくデータソースの「バラエティ」だと述べています。

 データウェアハウスにより多くのデータを貯め込み、統合すればいいという流れに対して、教授はそれがいかに困難かが理解されていないと批判します。これからはむしろ「データキュレーション」が大事で、データウェアハウスに納まりきれない何百万という種類のデータの「ロングテール」を管理しなくてはならない、というのです。

 キュレーションやロングテールという言葉をご存知の方も多いと思いますが、簡単に説明しておきましょう。美術館で展示品を収集・鑑定・管理する職業はキュレーターと呼ばれていますが、キュレーションとはまさにそうした仕事のことです。インターネット上では、キュレーション・メディアなるものも成長しています。

アマゾン、圧倒的強さの秘密は「売れない」ニッチ商品の多さ?売上分布から解剖の画像1図1

 一方、ロングテールとは、分布の裾(尻尾)が非常に長いことをいいます。小売業のアイテム別売り上げ分布でいえば、その大半を占めるごく少数のアイテムがある一方、売り上げが非常に小さいアイテムが無数に存在する状態がそうです(図1)。一般に、オンライン小売業はオフライン小売業に比べて、売上分布がロングテールになる傾向があります。

 ビッグデータについても、情報の分布がロングテールになっているとストーンブレーカーは指摘しています。筆者はデータベースについてはまったくの門外漢ですが、彼の指摘はビッグデータの本質を捉えているように感じます。そこで、今回はロングテールという概念に注目して、ビッグデータ時代のマーケティングについて考えてみましょう。

水野誠/明治大学商学部教授

水野誠/明治大学商学部教授

明治大学商学部教授
、博士(経済学)東京大学。1980年筑波大学第一学群社会学類卒業。1985年筑波大学大学院経営・政策科学研究科修士課程修了。2000年東京大学大学院経済学研究科企業・市場専攻博士課程単位取得満期退学。株式会社博報堂(マーケティング局・研究開発局、1980~2003年)における勤務、筑波大学社会工学系専任講師、同大学大学院システム情報工学研究科専任講師、准教授(2003~2008年)、明治大学商学部准教授(2008~2014年)を経て現職

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