(3)キャラクターも、世代や国境を越えて広く、末永く愛されるように、プロの制作スタッフだけでなく、世界中のファンからいろいろなアイデアや意見を募り、作品づくりに生かしている。
ディズニ-の場合、海外を含めたライセンス収入などで構成するコンシューマープロダクツ部門の2011年度売上高は、30億4900万ドル(約2400億円)に上る。海外展開の拠点として各国に現地法人などをつくり、
(1)ブランド戦略やライセンス管理など、本社主導で統一して行う世界戦略
(2)現地のニ-ズに応え、現地企業とも連携して行う現地化戦略
をうまく組み合わせて行っている。これは何もディズニー社に限らず、米国の大手エンターテインメント企業はどこも実施していることだ。
●海外展開に積極的に取り組む企業が増加
最近になって、日本でもコンテンツビジネスの海外展開に積極的に取り組む企業が増えてきた。
玩具大手・タカラトミーは、人気キャラクターの「ポケモン」の玩具を、日本・アジア・欧米など世界市場で企画・販売する権利を取得し、ブランド戦略・商品化戦略・マーケティング戦略・ライセンス戦略を有機的に結合し、統一したビジネス戦略を効果的に展開することで、海外市場の開拓を進めている。これまでこれらのビジネス戦略がバラバラに行われていたため、海外市場の開拓や海外収入の確保という面で、大きな成果が生まれていなかった。統一した世界戦略と現地に適応した現地化戦略を巧みに組み合わせたビジネスモデルをどう構築するかが、今後の課題になる。
現地化戦略では、日本の人気野球マンガ・アニメの『巨人の星』が、インド版『ライジングスター』にリメイクされて企画・制作・放映されている。『巨人の星』のアニメ化を手掛けた日本の制作会社とインド企業がそれぞれ分担して、原作の内容やストーリーの大筋を生かしながら、現地のニーズを柔軟に取り入れて共同制作している。
舞台はインド最大の都市ムンバイで、星飛雄馬ならぬ主人公のインド人「スーラジ」が挑むのは野球ではなく、インドで人気のクリケットだ。ディズニー社の場合、自社の作品の変更・修正・リメイクは一切認めておらず、ブランド・商品化・ライセンス・マ-ケティングまで本社主導で完全にコントロ-ルされている。
しかし、海外ビジネス展開や海外市場開拓に遅れた日本の場合は、
(1)本社主導の統一した世界戦略
(2)現地企業と連携した現地化戦略
の巧みな組み合わせ(ハイブリッド戦略)が必要になろう。
こうしたハイブリッド戦略の成功事例としては、サンリオの「ハローキティ」などがあるが、今後早急にグローバル戦略とローカル戦略を組み合わせたビジネスモデルの構築が課題になる。
インドは、中国のような外国アニメの規制がほとんどなく、日本の国内市場が縮む中で成長市場として大いに期待できる。日本とインドの間では、12年4月にアニメ・映画・デザインなどクリエイティブ(コンテンツ)産業に関する経済交流・産業協力の政府間合意がなされており、その意味でも追い風になっている。
●トランスフォーマーの成功事例
さらに、海外の市場開拓・ビジネス展開で注目されるのは、日米合作アニメ「トランスフォーマー」シリ-ズの成功と、その経験事例である。
タカラトミーが制作・販売している変形玩具「トランスフォーマー」が、米国の玩具メーカー・ハズブロ社やマーベル・コミック社と連携して、日米合作の「トランスフォーマー」シリーズとして販売されたことにより、米国をはじめ世界中で大ヒットした。この作品は、
・玩具(タカラトミー社)
・アニメ(多彩なアニメ作品)
・ゲ-ム(ニンテンドー、プレイステーション)
・映画(マイケル・ベイ監督による日米共同製作)
・テレビ番組(日本テレビ、テレビ東京)
など複数のフィールドで「ワンソース・マルチユース」で商業展開されて、成功を収めている。トランスフォーマーの世界的なメガヒットは、マルチメディアのシリーズ作品において、日本企業だけでなく日米合作で推進したことが大きな成功要因だ。