国土交通省は、三菱自がリコール(回収・無償修理)に消極的だったとして厳重注意し、12月25日に改善への取り組み状況を確認するため、東京都港区の同社本社や愛知県岡崎市の品質統括本部など9カ所に、道路運送車両法に基づく立ち入り検査を実施した。
三菱自は12月19日、軽自動車の「ミニキャブ」や「トッポBJ」など8車種、計121万台のリコールを国交省に届け出ていた。エンジン部品の不具合によりエンジンのオイル漏れやエンジンの停止を招く恐れがあるという。
国交省は同日、三菱自の報告や説明などに不適切な点があったとし、口頭で厳重注意した。メーカーに対して国交省が口頭で厳重注意するのは極めて異例だ。というのも三菱自は、今回と同様の理由によるリコールを10年11月、12年1月、3月と3度行っており、今回で4度目となるからだ。
国交省の発表によると、三菱自が軽自動車のエンジン部品について不具合があるとの情報をはじめて入手したのは05年2月のこと。しかし、事故が発生していないことなどを理由に08年1月の社内会議で「リコールは不要」と判断した。
一方、国交省は独自に検証した結果、09年10月と12月にリコールを実施するように指導。三菱自は10年11月に最初のリコールを行った。実施前、国交省に対し「オイルは大量に漏れていない」と漏れ方を過小に評価した説明をするなど、対応に不適切な点があったというのだ。
その後、1回目のリコールについて「対象車の範囲が不十分」との社員の内部通報があった。国交省の指示を受けて、12年1月と3月に対象車両の範囲を拡大してリコールを重ねた。再度のリコールに対しても同様の内部からの通報があって、弁護士らで組織する外部有識者委員会が社内調査を行う事態となった。そして、今回、4回目のリコールを行ったのである。
最終的には、計4回で10車種176万台のリコールを届け出たことになる。4回目の121万台がこれまでで一番多く、リコールに消極的だった姿勢が見て取れる。176万台は国内で最多のリコール台数となる。リコールに伴う費用は1台あたり8000円から1万6000円、総額で75億円にのぼると見込まれている。費用は13年3月期決算で計上する方針。純利益の見通しが130億円の三菱自にとって、この負担は大きい。
三菱自の13年3月期の世界販売台数の見通しは104万台。その1.7倍にあたる176万台の大規模なリコールである。経営再建の大きな痛手になることは間違いない。
●三菱グループから切り離し説も!?
リコールに消極的だったのは、00年のリコール隠しに端を発した不祥事がトラウマになっているからだ。あとにまで残る激しい恐怖などの心理的衝撃や体験を、トラウマという。大規模なリコールを届け出て、経営危機を招くことを恐れたのだ。
リコール隠しの発端は00年7月18日。三菱自(登記上の商号は三菱自動車工業)が車の欠陥情報を隠蔽し、リコールの届け出を怠った道路運送車両法違反(虚偽の報告)で、運輸省(現・国土交通省)が調査に乗り出した。内部告発に基づき三菱自に立ち入り検査したところ、社員のロッカーから数百通のクレームの報告書が発見された。