マツダ新型CX-30 「夢のエンジン」に50~100万円アップの商品価値があるのか?
9月20日、マツダの新型SUVであるCX-30が発表された。CX-3とCX-5の間を埋める絶妙なサイズ感で登場した同車は、トヨタのC-HRやホンダのヴェゼルといった、売れ筋コンパクトSUVと真っ向勝負できるポテンシャルを感じさせる。
ただ、唯一にして最大の不安点はエンジンの展開なのである。SKYACTIV(スカイアクティブ)テクノロジーと魂動デザインを打ち出し、マツダが新世代商品を打ち出したのは、2012年の先代CX-5の発売から。まずはエモーショナルなスタイリングで目を引き、新型プラットフォームをはじめとした走りのよさでユーザーを納得させた。
その走りのよさを牽引したのがSKYACTIV-D、クリーンディーゼルの設定だろう。
フィアットがコモンレール式インジェクターを開発して以降、欧州を中心に急速に普及した新世代ディーゼルエンジンだが、石原慎太郎元東京都知事のパフォーマンスで逆風状態の日本では、内外メーカーともが完全にノータッチ。加えて厳しい排ガス規制も普及を拒んだ。
それでも、高いトルク性能や優れた燃費性能に興味を持つ「隠れディーゼルファン」は一定数いたわけで、そこにポンと規制値をクリアしたSKYACTIV-Dが出たのだから、結構な割合で売れたのは必然なのである。
そうしてロケットスタートを成功させたマツダ。7年を経て一巡した魂動デザインについては、第2章として「引き算の美学」をマツダ3から展開。一方、次世代テクノロジーとして大々的に打ち出しているのが件のSKYACTIV-Xエンジンだ。
「火花点火制御圧縮着火」として、ガソリンとディーゼルのいいとこ取りを行う夢のエンジン。多くのメーカーが開発を試みるも実現できなかった動力源を、発想の転換で量産にこぎ着けた注目の新技術だ。若干の遅れはあったようだけど、年明け早々には発売できる見込みと聞く。
ただ、その夢のエンジン。先行して行われた海外試乗記や現地仕様のスペックを見る限り、どうも怪しい気配が漂う。たとえば回転フィールがいいとか、パワー感があるとかいったジャーナリストの感想は、ポジティブではあるけれど「夢のエンジン」という次元の話ではない。
スペックも、出力はガソリン車の15%アップ程度にとどまるし、燃費はディーゼルと同程度。それを過給機などの付かない「素」のエンジンで達成したのは画期的かもしれないが、ではそれでユーザーにガソリン、ディーゼル車に対し50~100万円の追加料金を求めるのが妥当かといえば甚だ疑問だろう。