サード・ポイントCEOのダニエル・ローブ氏は投資家に宛てた書簡で、2015年7~9月にセブン&アイHDの株式を取得したことを明らかにした。ローブ氏はセブン&アイHD株について「世界の小売企業と比較して割安に評価されている」と分析。さらに「著しく業績が低迷している総合スーパーのイトーヨーカ堂を独立させて再建すべきだ」「配当も2倍に引き上げるよう」などと要求した。また、全米で約9000店を展開する米セブン-イレブン・インクについては「米国市場で分離上場したらどうか」としている。
国内の投資家の要求や意見などにとらわれない鈴木氏も、サード・ポイントには慎重な構えをみせているようだ。10月下旬に米国に出張したセブン&アイHDの村田紀敏社長兼COO(最高執行責任者)がローブ氏と会った、との情報もある。
サード・ポイントの手法
サード・ポイントはこれまでソニー、IHI、ファナック、ソフトバンクといった日本企業に投資した。すでに、ソニー、IHI、ソフトバンクの株式を売却したとみられている。
ソニーには映画・娯楽部門の分離を要求した。ソニーの業績が赤字から脱却する兆しが出てきたことから株価は上昇。サード・ポイントは「20%ほど儲けた」と書簡で認めた。IHIには都内に保有する土地の有効活用を求めたが、期待したほど遊休不動産の売却が進まなかったため売却した。ソフトバンクは米国の携帯電話事業が苦戦中のため、投資に見切りをつけたと推測されている。
ファナックには手元資金が多すぎると指摘して大幅な株主還元を求めた。稲葉善治社長が慌ててその要求にこたえて、大幅な株主還元策を決めた。一時、株価が急騰した時に売り抜けたと市場筋の間ではみられている。
今夏以降明らかになったのが、スズキとセブン&アイHD株式の取得だ。スズキについてはインド子会社マルチ・スズキの価値がスズキ本体の株価に十分に反映されていないと指摘した。サード・ポイントは約2兆円の運用資産を持つ。だが、サード・ポイントの旗艦ファンドの運用実績は7~9月期はマイナスだった。外資系証券会社のアナリストは、「お人好しの日本企業を狙い撃ちにしている」と辛辣な見方をする。
サード・ポイントの手法は、情報を流して株価を釣り上げて、高値で売り抜けるというもの。だからサード・ポイントが去った後は株価が急落する。