制作プロジェクト本部は、メーカーでいえば開発や製造に当たる。タレントという特殊な商品を個別開発してプロモートする業務なのだろう。マネージメント本部はタレントのマネージメントを司り、テレビやマスコミなどの出演先に対応し、メーカーなどでは営業に当たる業務をしていると思われる。
タレントだった滝沢氏(37歳)が9月に取締役副社長に就任した。滝沢氏がプロデューサーとして「制作プロジェクト本部」の責任者を務めるとみられる。ジャニー氏が注力していたプロデューサー機能の後継責任者としては一時、堂本光一氏も取りざたされていたが、滝沢氏がその任に収まったわけだ。ジャニーズではこの分野の人材が豊富だ。滝沢氏のほかにも、この夏から堂本氏、松本潤氏、山下智久氏などが後輩のコンサートのプロデュースを行っている。これらのスターたちがプロデュースに乗り出すことで、それがイベントの集客効果をもたらしているとみられる。
創業者でありカリスマ・プロデューサーだったジャニー氏が逝った後、その分野の職掌は複数の才能あふれた「タレント上がり」の人たちが務めていく体制が見える。それはまた、現役のタレントやJr.たちにも将来のキャリアパスを示すことになり、励みになるのではないか。
いずれにせよ、巨大になったジャニーズでは多くのコンサートやイベントを一人のプロデューサーがすべて仕切っていくことは不可能となってきている。
飯島三智氏の後継者は育つか
経営や経営管理は、もちろん創業一族であるジュリー社長(53歳)が取り仕切る。実母のメリー会長は92歳という高齢もあり、ジュリー氏に経営のすべてを任せてしまってよいのではないか。ジャニー氏の逝去をタイミングとして、外から経営を監視することができる。セブン&アイ・グループにおける伊藤雅俊オーナーのような立場に立つことを勧める。
ジャニーズの経営でほかに重要な機能は、営業である。この部分で辣腕を振るっていたのが、SMAPを世に出した飯島三智氏(61歳、現在はCULEN社取締役)だった。16年1月にジャニーズを退社して、それがSMAP解散のきっかけになったといわれている。内部のマネージメントの実状について詳細はわからないが、ジャニー氏が逝去した後にメリー氏がジュリー氏に道を譲り、そのジュリー氏を滝沢氏と飯島氏が左右で支えるという体制を取っていれば、同社はいっそうの安定感を得られたのではないか。
それは「ないものねだり」だが、現在の経営体制を俯瞰すると、飯島氏の不在を補完する、あるいは超えるような営業畑の経営幹部の活躍が、ジャニーズの発展を支えると私は思う。チーム経営により、ジャニーズには巨大な「家族経営」から脱皮できる契機が来ている。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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