価格ドットコムやトリップアドバイザーなどの比較サイトは「過信は禁物」
この効果を悪用したのがステルス・マーケティングです。
1.行列の「並び屋」
2.パチンコの「おとり」
3.イベントやライブを盛り上げる「サクラ」
4.健康関連の「ヤラセ」
5.有名人のブログやツイートにおける商品紹介
本来、これらは詐欺まがいのことをやっているので、「マーケティング」と付けてほしくないですね。
2.まとめサイトには要注意
ネットにより世の中に流通する情報量は飛躍的に増えましたが、人間が処理できる情報量は限られているため、情報過負荷の問題が指摘されています。その結果、近頃は複数情報源を同時に低関与(直感的、非合理的)に処理する「ながら」接触、まとめサイトやランキングサイトなどの「要約情報」の重視、マスメディアより口コミなど「パーソナルなメディア」への過剰信頼、といった情報処理行動が見受けられます。そしてこれらの情報を、利用可能性ヒューリスティックや代表性ヒューリスティックを用いて、評価、判断、行動の基礎にしてしまうのが、最近の傾向です。
情報過多から生じる消費者の負荷を減らし、企業とのマッチングを促進する情報中間業者も多数出現しています。たとえば、価格ドットコム、食べログ、トリップアドバイザーのようなメタサーチ・エンジンを利用するのも一つの対策でしょう。
ただし、これらの過信は禁物です。特に無料で利用できる場合、業者はユーザーではなく他から収益を得ているため、情報提供が中立でない可能性があるからです。
たとえばGoogleやYahoo!などで検索した際、画面上で一番目立つ上部と右側には、その検索キーワードの入札金額が高かったスポンサーのサイトが表示されます。これらはリスティング広告(スポンサードサーチ)と呼ばれています。それに続いて、通常の検索結果(オーガニックサーチ)が、特に線引きもなく提示されます。スポンサードサーチをオーガニックサーチから区別する「広告」の表記は小さくて、見逃してしまいそうです。
同様に、ポータルサイトの見出しに「提供リンク」や「PR」と書かれているものは、編集記事のような体裁をした広告です。これらは記事広告(advertorial)、あるいはネイティブ広告(native advertising)と呼ばれます。その他に、中古車下取価格比較サイトの買取業者が、すべて裏で同じ企業によって運営されていたという事例もあります。
フェイクニュース、デマ、炎上などに踊らされないためには、なるべくオリジナル(リツイートや拡散されていない)で信頼できる情報源を参照することが大切です。
(文=阿部誠/東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授)