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ホワイト企業化したワタミに“性根がブラック経営者”の渡邉氏復帰…労働環境に懸念広まる

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

 こうした状況に鑑みると、ワタミはホワイト企業化したといっていいのかもしれない。ただ、これらは渡邉氏が経営の一線を退いた後に実現したことであり、渡邉氏の復帰とともに再びブラック企業化しないか、一抹の不安はある。

 渡邉氏は参議院議員だった昨年3月13日の参院予算委員会で、過労死遺族を前に「お話を聞いていると、週休7日が人間にとって幸せなのかと聞こえる」と発言し、遺族から抗議を受けて謝罪に追い込まれている。この発言から、渡邉氏の性根はブラック企業経営者のままだと指摘する向きもある。周囲は注意する必要がありそうだ。

売上高を10年で2倍にする目標

 渡邉氏のもとで打ち出した、今後10年で売上高を今の倍となる2000億円、営業利益を100億円にする目標の達成に向けた動向にも関心が集まる。達成に向けて、新規事業では特に、岩手県陸前高田市で計画している農業テーマパーク「ワタミオーガニックランド」が注目されている。有機・循環型社会をテーマとし、農場や食品加工施設、レストラン、物販施設などで構成する農業テーマパークになっている。東日本大震災から10年となる21年3月11日に開業予定だ。

 国内の外食事業ではフランチャイズチェーン(FC)展開の強化が目玉施策だ。これまでの店舗展開は直営店が中心だったが、今後はFC店の拡大を図っていくという。演出家のテリー伊藤氏と組んで昨年11月に1号店を出した新業態のから揚げ店「から揚げの天才」は、直営で店舗展開を始めたが、今後はFC展開を進める考えだ。「三代目鳥メロ」など複数の業態でも、FC展開を始めるという。

 調理済み商品を消費者に届ける宅食事業の強化も図る。同事業は高齢者が主要顧客で、高齢者以外は開拓が遅れていたが、今後はこうした層を積極的に開拓していく方針だ。また、法人向け宅配も強化していくという。

 こうした施策で目標の達成を狙う。だが、足元の業績は必ずしも思わしいものではなく、目標達成の出鼻をくじかれている。11月14日発表の19年4~9月期連結決算は、売上高が前年同期比2.5%減の453億円、営業損益が2億9200万円の赤字(前年同期は4億400万円の赤字)と、苦戦を強いられた。

 国内の外食事業は、業態転換が奏功して既存店売上高が前年を上回るなどしたため、売上高は3.0%増の233億円と増収を達成した。ただ、営業損益は3200万円の赤字(前年同期は6700万円の赤字)で、前年同期から改善したものの黒字化には至らなかった。

 外食と並ぶ主力事業の宅食事業も冴えない。前年9月時点に比べ、平日1日当たりの宅配食数が8000食減って23万2000食になったことが響き、売上高は8.2%減と大きく落ち込んでしまった。営業利益は生産体制の見直しにより34.5%増の9億2100万円と好調だったが、大幅な売り上げ減のため、喜べないだろう。

 海外の外食事業が振るわなかったこともあり、19年4~9月期の売上高と営業利益は、ともに従来予想を下回った。20年3月期通期の見通しは変えず、売上高は前期比1.6%増の963億円、営業利益は3.5%増の11億円を見込むも、達成が危ぶまれる。渡邉氏は労働環境と業績の両面で、あらためて手腕が問われている。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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