誤配や詐欺続出のマイナンバー、直前で「穴だらけ」発覚!役所も機能不全で役立たず
国は企業に対して厳格な取り扱いを指導しており、なかには「情報漏洩のリスクを考え、インターネットにつながないマイナンバー専用パソコンを購入した」企業もあるが、企業現場からは逆に「行政のセキュリティー対策が心配」と指摘する声も目立った。
面澤氏が取材したなかには「可能性は小さいと思うが」と前置きしたうえで、「もし今後、マイナンバー関連の汚職や情報漏洩事件が続いて、国民の間にマイナンバーへのネガティブイメージが定着すると、運用面でどんどん規制が強まり、まるで使えない制度になってしまう恐れがないわけではない」と懸念する専門家もいた。
スタートしてからの問題はあるが、様子見しながら対応
そうした問題点だけではなく、企業の冷静な姿勢も伝えておこう。
この10年で考えると、2005年に全面施行された「個人情報保護法」や06年の「内部統制」(大会社及び関連会社に義務づけ)への対応で学んだ企業ほど、マイナンバーと冷静に向き合っているようだ。「現時点では業務の負荷が増えているが、具体的な影響は実際にスタートしないと判断できない」(大手サービス業の課長)という声もあった。
メディアに対して次の意見があったことも、報道に関わる1人として自戒したい。
「情報漏洩に対する不安を煽る報道が多く、ちょっとしたミスで責任を負わされるのではないかと、社員がマイナンバーに触るのを極端に怖がってしまっています。マスコミの冷静な報道が望まれます」(大手サービス業の役員)
16年1月から制度がスタートすれば、総務部や人事部以外の人も無関係ではいられない。営業担当者や店舗スタッフが取引相手から個人番号を入手する役割を担うこともあるだろう。企業負担が大きい制度なので、取りまとめる部署以外の従業員の協力も欠かせない。
最後に、「マイナンバーによって副業が発覚する」という報道も多いが、それに関する企業の対応を紹介しておこう。調査で「就業規則に副業禁止の規定がある」と答えた企業は83.5%に上った。にもかかわらず、副業が発覚した場合、「厳格に対処する」企業(32.2%)を、「極端な事案にだけ対処する」(35.3%)と「不問にする」(0.9%)を合わせた企業が上回った。杓子定規ではなく柔軟に対応する企業が多いのだ。
大企業の人事部門を取材すると、「将来、ロボットやITに取って代わられない本当の専門性を身につけるよう教育していく」と語る幹部も増えた。そうなると、自立した社員を育成したい企業では、今後「週末起業」のような自己啓発的な副業は黙認されていきそうだ。もちろん信頼できる上司に伝えておくなど、個人としてのリスク管理はしておきたい。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)