セット注文で利益確保
だが、消費者に安全性を疑問視されるようになり、売り上げが低迷すると薄利多売方式の経営は大打撃を受けた。かといって、いきなり価格を上げれば客離れに拍車をかけかねない。そのため、別の方法で売り上げを確保しなければならないのだ。
価格の安いハンバーガーは、それによって顧客を誘導し、ポテトやドリンクなど、利益率の高いサイドメニューを合わせたセットメニューの販売によって売上高を確保する狙いもある。
しかし、12年10月にカウンター上のメニュー表を廃止し、セットメニューばかりを全面に押し出した店舗改革を実施した際、その露骨な手法に批判が殺到したため、1年余り後に復活した経緯がある。
ちなみに、現在ドリンク(M)は220円、ポテト(M)は270円だが、いずれも原価は20円にも満たない。それがバーガー類と一緒に頼めば、ドリンクとポテト合わせて300円ほどになるため、「190円もお得」と思わせてセットでの注文を促す。だが、実際のところ、販売数が減っている現状では、セットで頼んでもらわないと利益が出ないのだ。
だが、平日10時から14時半までのランチタイムに限り、各種ハンバーガーとポテト、ドリンクのセットを割引販売する「昼マック」の施策は、14年10月に開始してからわずか1年で廃止となった。先のメニュー表の撤廃、1年で復活といった施策と同様、消費者には「迷走している」ともとらえられている。
マクドナルドは10月に200円のバーガー「エグチ」「バベポ」「ハムタス」の3種類を投入するなど、新規客の開拓を狙っているが、目に見える効果は出ていない。
マクドナルドは、年末までに約400店の改装を終える予定で、18年までに約9割の店舗を改装するという。11月26日には、日本人デザイナーによる「和テイスト」の店舗を立ち上げるなど、消費者のつなぎとめを図っている。
「デフレ時代の勝ち組」ともてはやされたマクドナルドだが、空前の逆境ともいえる状況を脱却することはできるのか。
(文=沼田利明/マーケティングコンサルタント)