ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 日産、ゴーン放逐は正しかったのか?  > 2ページ目
NEW
鈴木貴博「経済を読む“目玉”」

日産の業績悪化、ゴーン放逐は正しかったのか?優秀な経営者を放逐せざるを得ない日本

文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

「ルールを守った私物化」をどう考えるか?

 さて、日産のこれからも気になりますが、今回の記事で焦点をあてたいのは「会社を私物化するけれども、業績はきちんとあげるCEO」という存在を私たちはどう考えるべきかという話です。

 ゴーン氏についてはまだ公判中ですので、容疑としてあげられているような自身の金融取引の損失を穴埋めするために日産を利用したとか、20億円相当の自宅を日産に買わせたといった事実があったのかどうかはわからないという前提で話をします。

 では一般論としては、会社を自分のものであるかのように扱うけれど、長期にわたって利益を上げる有能さを持っている経営者は、良い存在なのでしょうか。それとも悪い存在なのでしょうか。これは感情論では受け入れがたい話である一方で、功利主義の観点でいえば「望ましい」と考える株主は多いはずです。

 もちろん私物化の影響範囲は広いので、たとえば権力をかさにパワハラやライバルの追い落としをするとか、有能なほかの社員のモラルを下げたりといったさらなる悪影響を伴うとすれば、いくら利益を稼ぎ出したとしても、それは悪だと考えるべきでしょう。報道によれば、日産の幹部がゴーン氏の行いについて検察に内部告発をするのを決めたのも、法令遵守という観点でモラル的に容認できないところまできていたということのようです。

 しかし仮に、ルールを守った私物化が成立するような新しいルールを考えた場合はどうでしょう。これはあくまで思考実験ですが、株主総会や役員会で「CEOには連結営業利益の0.5%を私的に使うことを許す」と決めたとしたら、この問題はどのように変わるでしょうか。「日本でもフランスでも、そんなルールは会社が決めることはできない」などと言わずに、「もしそのようなルールがあったらどうなのか」を考えてみましょう。

 もしこのようなルールの世界にゴーン氏がいたとすれば、彼の個人的な苦境は解消されるはずです。たとえば資産運用に失敗して20億円の担保を差し出さなければいけなくなったとしても、日産が6000億円の営業利益を叩き出せば30億円の私的流用枠ができます。それだけ毎年流用枠があれば、レバノンに20億円する豪華な自宅がほしくなっても、1年分の枠を使って社宅として買ってもらうことがルールのなかで可能になります。

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役

事業戦略コンサルタント。百年コンサルティング代表取締役。1986年、ボストンコンサルティンググループ入社。持ち前の分析力と洞察力を武器に、企業間の複雑な競争原理を解明する専門家として13年にわたり活躍。伝説のコンサルタントと呼ばれる。ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)の起業に参画後、03年に独立し、百年コンサルティングを創業。以来、最も創造的でかつ「がつん!」とインパクトのある事業戦略作りができるアドバイザーとして大企業からの注文が途絶えたことがない。主な著書に『日本経済復活の書』『日本経済予言の書』(PHP研究所)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)、『仕事消滅』(講談社)などがある。
百年コンサルティング 代表 鈴木貴博公式ページ

日産の業績悪化、ゴーン放逐は正しかったのか?優秀な経営者を放逐せざるを得ない日本のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!