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小林敬幸「ビジネスのホント」

小資金でも地味でも勝ち続ける「広島式」の秘密!カープ、パフューム、マツダ…

文=小林敬幸/『ビジネスをつくる仕事』著者

 また、カープが39年連続黒字経営であるように、チーム経営も無理をせず堅実だ。マツダも、HV(ハイブリッドカー)やEV(電気自動車)といった流行に乗らず、トヨタ自動車や本田技研工業(ホンダ)と正面から競合しないで、ガソリンエンジンの徹底的な省エネを図って成功している。Perfumeも、AKB48の総選挙のような派手派手しいイベントは行わず、音楽のパフォーマンスでしっかりと人気を保っている。

(2)東京をすっ飛ばして海外を見る

 東京や大都市のやりかたを真似して、“小さい東京”のようなアプローチを取らない。それよりは、東京をすっ飛ばして海外を見据えている。海外から独創的なものを取り入れて、エッジの利いた個性的な戦術を取ることにより、(1)で見た「身の丈経営」でスケールが小さくなってしまうのを防いでいる。

 サンフレッチェはチームの歴史上の曲がり角で、スチュワート・ウィリアム・バクスター、ミハイロ・ペトロヴィッチという外国人監督がうまく機能して基盤づくりができた。カープのホームスタジアムであるMAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島は、東京ドームなど国内の球場を参考にせず、アメリカの野球場を徹底的に研究して建築し、女性ファンや固定客を掘り起こした。マツダも米フォード・モーターから経営手法を学んだ。Perfumeは、海外で人気の高い数少ない日本のミュージシャンだ。このように、海外の手法をうまく取り入れている。

(3)人材の確保と育成

 サンフレッチェもカープも資金力がないので、まだ実績のない選手を集めて自分たちで育て上げてチームの強化に成功している。そこでなんといっても際立っているのは、スカウトの充実である。カープでは、高い実績を挙げた優秀なスカウトは、オーナーと頻繁に打ち合わせて働きやすい環境を与えられている。

 サンフレッチェは、Jリーグ2部(J2)の選手を引っ張ってきて育て、戦力化するのがうまい。広州恒大戦で2得点と大活躍したドウグラス選手は、J2では活躍することもあれば出場機会を失うこともあるという選手だった。彼が加入した当初は、あまりチームにフィットせずに苦労していた。それでも辛抱強く出場機会を与え、チーム戦術を教えた結果、リーグ終盤には優勝の立役者になるまで成長した。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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