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銀座のラオックスに入ると、そこはもはや中国だった…客も店員も言葉も中国、壁一面真っ赤

文=松原麻依/清談社
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 さらに、販売員もほとんどは中国人である。売り場内でほかの店員と立ち話をしたり、化粧品コーナーの鏡の前で化粧崩れがないかチェックしていたり、日本人従業員のような規律には欠けるが、商品の説明や接客はかなり丁寧だ。

「東芝の電気シェーバーなら、ほかにもまだありますよ」「このパックなら、同じ値段で60枚入りなので得ですよ」と、客が離れそうになるとすかさず別の商品を勧める。まるで中国の市場のような雰囲気の中で、客はリラックスした様子で買い物を楽しんでいた。

 品揃えに関しても、中国人に好まれるありとあらゆる商品がところ狭しと並べられている。また、電化製品は中国での使用に対応しており、自国に持ち帰っても変圧器や変換プラグなしで使うことができる。さらに、万が一故障した場合も、中国で対応してもらえる体制になっているようだ。

 店員による熱心な商品説明、中国人好みの商品を集約させた店内、購入後のアフターサービス。これらは中国人観光客にとって利便性が高いことはもちろん、観光業者にとってもガイドによる中国語の説明が不要のため、ツアーに組み込みやすい。

 実際、筆者が来店した日も、店舗前に中国人ツアー客が利用する大型バスが停まっていた。さらに、買い物を終えた客がバスの横に集合していたが、その半数近くがラオックスのロゴが入った買い物袋を持っていた。入店客の半分が商品を買ったと考えると、驚異の購買率である。

インバウンド需要頼みはリスクも大きい

 その盛況ぶりを裏付けるかのように、ラオックスはここ数年業績を伸ばし続けている。もともとは東京・秋葉原を中心に展開する老舗の家電量販店だったが、00年代半ばから業績不振に陥り、09年に中国の大手家電量販店・蘇寧電器(現蘇寧雲商)に買収された。

 それ以降、免税店に転向し、徐々に利益を上げていったのだ。14年12月期に14期ぶりの黒字に転向、15年12月期の連結営業利益は前期比5.5倍の約95億円で過去最高益を記録した。現在は日本全国34店舗、北海道から沖縄まで地方の観光地にも店舗をオープンさせ、インバウンド(訪日観光客)需要の受け皿になっている。

 ヤマダ電機やコジマら大手家電量販店が通販サイトの台頭などによって苦境に立たされる中、まさにラオックスの一人勝ち状態といえる。その躍進の背景には中国人観光客の購買力があることはいうまでもないが、今やどの家電量販店も中国人観光客を呼びこもうと必死になっている状態だ。

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