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GUの「底なしの価格破壊」でジーンズメイトが経営危機…親会社ライザップの不振もアダ

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
ジーンズメイトの店舗(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
ジーンズメイトの店舗(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 カジュアル衣料品専門店のジーンズメイトが再び不振にあえいでいる。フィットネス大手、RIZAPグループの傘下に入って経営再建を進め、一時は大きな盛り返しを見せた。だが、ここにきて再度、不振に陥っている。このまま沈んでしまうのだろうか。

 若者を中心としたジーンズ離れや衣料品市場の低迷などが同社を直撃し、売上高は2000年代中頃まで220~240億円の間で推移し、成長が見られなかった。そして08年からは大きく悪化するようになり、その後の売上高は減少傾向が続いた。また、最終損益は09年2月期から18年3月期まで10期連続となる赤字の計上を余儀なくされている。

 このように厳しい状況のなか、ジーンズメイトは17年2月にRIZAPの連結子会社となり、経営の立て直しを進めてきた。

 まずは不採算店の閉鎖を進めていった。店舗数は17年2月度末(17年2月20日)に91店だったが、18年3月末には81店まで減らした。19年9月末時点では80店となっている。不採算店を閉鎖することで収益性の向上を図った。

 不採算店の閉鎖以外にも対策を講じてきた。ブランドロゴを変更したほか、男性向け衣料品偏重の品ぞろえを改めて女性向けの衣料品や雑貨を増やしたり、都心店を中心にインバウンド(訪日外国人)需要の取り込みを強化することにより収益向上を図った。

 こうした施策が実を結び、既存店売上高は上向くようになった。17年2月期は前期比0.7%減とマイナスだったが、18年3月期(17年2月21日~18年3月31日)は前年同期比6.0%増と大きく伸び、さらに19年3月期は2.8%増と堅調に推移している。

 ところが、それ以降の既存店売上高は苦戦が目立つようになった。特に19年4月(前年同月比11.3%減)と7月(同16.8%減)、10月(同11.8%減)が大幅なマイナスとなった。いずれの月も天候が悪かったため、ある程度落ち込むのは仕方がない。だが、ユニクロなどの競合店では、落ち込みがそれほど大きくないところもあり、すべてを天候のせいにはできない。

 なお、ユニクロの国内既存店売上高は、4月が1.7%減、10月が1.9%減とマイナス幅は小さかった。7月は10.0%減と大きく落ち込んだが、ジーンズメイトと比べれば落ち込み幅は小さいといえる。

ジーンズ量販店には厳しい状況

 いずれにせよジーンズメイトでは販売不振が続き、19年4~11月の既存店売上高は前年同期比6.8%減と大幅マイナスとなってしまった。

 既存店の不振を受け、ジーンズメイトの19年4~9月期の決算は厳しい内容となった。売上高は前年同期比6.5%減の39億7600万円、本業のもうけを示す営業利益は51.6%減の8600万円だった。最終的なもうけを示す純利益は50.1%減の6200万円だった。

 もちろん、ジーンズメイトは手をこまぬいているわけではない。さまざまな対策を講じて立て直しを図っている。だが、衣料品市場は低迷している。また、今後は少子高齢化の影響などにより、市場縮小は避けられない。一方で競争は激化しており、ジーンズメイトが再浮上を実現するのは容易なことではない。

 衣料品業界のなかでもジーンズメイトなどのジーンズ量販店は、特に厳しい状況に置かれている。ライトオンの19年8月期(同期から決算の締め日を20日から31日に変更し12カ月11日)の連結決算は、最終損益が61億円の赤字(前の期は4億5700万円の黒字)に転落した。マックハウスの19 年2月期単独決算は、最終損益が28億円の赤字(前の期は2億2400万円の赤字)だった。3社とも厳しい状況が続いている。

 ジーンズ量販店大手は「リーバイス」など高価格帯のジーンズを主力としているが、低価格帯のジーンズを販売する小売店に押されている。ユニクロを展開するファーストリテイリング傘下のカジュアル衣料品店「GU(ジーユー)」が09年3月に「990円ジーンズ」を売り出したのを皮切りに、小売り各社が1000円を切る低価格ジーンズを相次いで販売し価格破壊が起きた結果、ジーンズ量販店大手各社の業績が大きく悪化するようになった。

 また、1000円を切らないまでも、ユニクロなどファストファッション大手各社が高品質のジーンズを低価格で販売していることも大きな脅威となっている。こうして高価格帯のジーンズを主力とするジーンズ量販店大手各社は厳しい状況に置かれている。

 こうした状況を受け、ジーンズメイトはジーンズを減らしてトップスやジーンズ以外のボトムスを充実させることで事態の打開を図っている。新業態の「JEM(ジェイ・イー・エム)」では、こうした施策を積極的に取り入れており、同社はJEMの店舗を増やし、収益向上を狙っている。

RIZAPの不振も影響

 これらの施策は一定程度、功を奏している。ただ、不振から脱却するにはさらなる対策が必要だ。そうしたなか、課題となっているのがプライベートブランド(PB)の強化だ。

 ジーンズメイトは、ジーンズ以外では「チャンピオン」などのナショナルブランド(NB)の商品が売りとなっている。だが、カジュアル衣料品のNBはインバウンド需要がある一方で、日本人の間では需要が減っている。

 そこでPBが重要となってくるわけだが、ジーンズメイトのPBは育っておらず、ユニクロなど競合に対抗できるだけの力を持っていないのが現状だ。ジーンズメイトによると、最近ではPB商品「ブルースタンダード」のチェスターコートや「アウトドアプロダクツ」の ボアワンピースが売れているというが、まだまだだろう。

 このようにPBが育っていないこともあり、ジーンズメイトは厳しい状況にある。今後の動向は予断を許さない。

 もっとも、厳しいのはジーンズメイトやライオン、マックハウスだけではない。一時は安売りで人気を博したファッ

ションセンターしまむらも苦戦を強いられているし、オールドネイビーやフォーエバー21、アメリカン・イーグルは日本から撤退を余儀なくされている。勝ち組はユニクロなどほんの一握りだ。

 ジーンズメイトが不振に転じたのは、親会社のRIZAPが不振に陥ったことも大きいだろう。RIZAPは矢継ぎ早に経営不振の企業を買収して収益を拡大させてきたが、拡大路線があだとなり、19年3月期の連結最終損益(国際会計基準)は193億円の赤字(前の期は90億円の黒字)に転落した。業績を改善させるためRIZAPはグループ再編に乗り出さざるを得なくなり、それによりジーンズメイトへの関与が薄まり、ジーンズメイトの業績が悪化した面もあるといえる。

 ジーンズメイトは正念場を迎えている。はたして業績を上向かせることができるのか注目したい。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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