2016年3月期決算の第3四半期(15年4~12月期)決算は、減損損失の計上ラッシュである。原油や鉄鉱石、銅・石炭など資源の国際価格の下落が主な原因だ。減損とは、現在の事業(企業)価額が帳簿価格を下回った場合、その下回った分だけ帳簿価格を切り下げる会計処理をいう。資源安の影響をモロに受ける銘柄は総合商社や石油、大手鉄鋼、非鉄金属などだ。
商社では住友商事が減損処理の口火を切った。アフリカのマダガスカルで進めているニッケル開発事業の投資回収が見込めなくなり、16年3月期の連結決算に770億円の減損損失を計上すると発表したが、これだけでは済まなかった。結局、資源関連の減損損失は1700億円に達し、通期の純利益を当初の2300億円から1000億円に大幅に下方修正した。しかし、これで打ち止めになる保証はない。まだ減損は続くと見る向きも多い。
住友商事は15年3月期にも米シェールガスの開発失敗などで3100億円の減損損失を出し、16年ぶりに最終赤字(731億円の赤字)に転落した。この時は、住友商事が14年9月にシェール案件の巨額な減損を発表したのを皮切りに、ほかの商社でも資源案件の減損連鎖が起きた。住友商事は2年連続で最終赤字になるのではないかとの懸念が株式市場にはある。
昨年暮れ、ゴールドマン・サックス証券は大手商社が抱える潜在的な減損リスクを試算したリポートを出した。同リポートによると三菱商事は3540億円、三井物産は2490億円、住友商事は2340億円、丸紅は660億円(いずれもの税引き前)の減損リスクを抱えているという。今回も、住友商事が引き金を引き、商社の減損ラッシュが起きそうな雲行きなのだ。
これまでの経緯を振り返ってみよう。総合商社の15年4~12月期決算では、三菱商事が資源分野の純利益が前年同期比8割減となった。三井物産は通期の純利益の予想を2400億円から1900億円に引き下げた。チリの銅開発や原油・ガス開発のほか、ブラジルの農業事業でも赤字が拡大するとみられている。
丸紅は北海やメキシコ湾での原油開発など、資源関連で730億円の損失を計上。國分文也社長は「資源価格が永久に下がり続けることはないが、3月末がどうなるかはわからない」と語っている。丸紅にも利益の下振れリスクはある。
2月10日現在の大手商社の16年3月期の最終利益の見通しは次のとおり。
(1)伊藤忠商事3300億円(予想を据え置き)
(2)三菱商事3000億円(下方修正したが、社長交代もあって1000億円程度の下振れがあるかもしれないとアナリストは指摘している)
(3)三井物産1900億円(2400億円から下方修正)
(4)丸紅1800億円(据え置き)
(5)住友商事1000億円(2300億円から下方修正)
2位の三菱商事以下は、まだ利益の下振れの余地を残している。非資源部門が好調な伊藤忠商事は過去最高益を見据えている。