原油安の直撃を受ける石油元売り大手
石油元売り5社の業績を原油安が直撃する。石油元売り会社は原油精製量の70日分以上を備蓄するよう国から義務付けられている。四半期ごとに在庫の評価額を見直し、原油価格が下がれば在庫評価損を計上する。
16年3月期の在庫評価損はJXホールディングスが2000億円、出光興産と東燃ゼネラル石油がそれぞれ700億円、コスモエネルギーホールディングスと昭和シェル石油が各500億円程度になると推計されている。5社合計で4400億円。期初に想定されていた2200億円の損失から倍増する勢いだ。石油元売りの赤字は6000億円以上になると見るアナリストもいる。
足元の原油価格は2月8日の米ニューヨーク市場で1バレル30ドルを割り込み、1年前に比べると40%以上下落している。石油元売り各社は、さらなる在庫評価損を強いられることになるかもしれない。大手5社はすべて16年3月期決算で連結最終赤字となる。
原油安は元売り各社の背中を押し、再編の動きが加速した。出光興産と昭和シェル石油連合、JXホールディングスと東燃ゼネラル石油連合が誕生することになる。取り残されたコスモ石油は、どちらかの陣営と合流するのだろうか。それとも別の道を行くのか、シャープと同じように外国資本に身売りするのかが注目される。
ガス・海運・造船・化学も減損
東京ガスは米シェールガス開発事業で106億円の減損損失を16年3月期の連結決算に計上する見通しだと発表した。米国の天然ガス価格を100万BTU(英国熱量単位)当たり3ドル程度と想定していたが、昨年末には2ドル台前半まで下がり採算が悪化した。期待したほど利益が出せなくなったと判断し、事業価値を引き下げた。
新興国経済の減速に悩む海運大手も損失に追い込まれた。鉄鉱石などを運ぶばら積み船やコンテナ船の収益が悪化。商船三井は船舶の処分で1800億円の損失を見込むなど16年3月期は1750億円の最終赤字に転落する。
日本郵船は採算が悪化した船舶の減損損失335億円を出し、最終利益は250億円と前期の475億円の利益からほぼ半減する。
大手鉄鋼各社は、鉄鉱石の在庫の評価損などでトータル1000億円超の損失が出る模様だ。非鉄・金属も例外ではない。三井金属はチリの銅鉱山に絡む減損損失を193億円計上、16年3月期の連結経常損益は7期ぶりに赤字だ。
住友金属鉱山は同じチリのシエラゴルダ銅鉱山で690億円の減損損失を出し、16年3月期の経常損益を850億円の黒字から40億円の赤字へ。02年3月期以来、14年ぶりに赤字に転落する。チリ・シエラゴルダ銅鉱山には、住友金属鉱山(出資比率31.5%)のほか、住友商事が13.5%出資している。同カセロネス銅鉱山ではJXホールディングスが800億円、前述の三井金属が193億円の減損損失を出す破目に陥った。