造船大手ではIHIの損失が止まらない。企業のガバナンスが機能していないという厳しい指摘もある。度重なる損失の発生でIHIの株価はアベノミクスがスタートした当時の水準にまで崩落。2月5日には184円の昨年来安に沈み、期末配当はゼロになる。IHIは16年3月期の最終利益を当初は490億円の黒字としていたが、結局300億円の赤字となる見通しで、7年ぶりの赤字転落となる。
川崎重工業は、15年4~12月期にブラジルの造船合弁事業で221億円の損失を明らかにした。
塩ビ国内大手のトクヤマは140億円の黒字を予想していた16年3月期の最終損益を1030億円の赤字へと大幅に下方修正した。トクヤマは15年4~12月期にも太陽電池の原料をつくる多結晶シリコン事業の減損損失として1234億円の特別損失を出し、15年1月30日に当時の幸後和寿社長が引責辞任すると発表した。
だが今回、横田浩社長は役員報酬を自主返納するだけで辞任はしない。「経営改革をやり遂げ、収益力のある会社にする(のが使命)」と言うが、毎年のように1000億円を超える巨額の損失を出している現状で、「収益力のある会社」という言葉が虚しく響く。
「のれん」代の減損処理も重荷に
15年は日本企業による海外企業の買収が相次いだが、M&A(合併・買収)はいいことばかりではない。買収先の企業が計画通り収益を上げられなければ減損処理を迫られる。
キリンホールディングスの15年12月期の連結最終損益は560億円の赤字(14年12月期は323億円の赤字)となり、上場以来初の最終赤字に転落する。11年に3000億円で買収したブラジルのビールメーカー、スキンカリオール(現ブラジルキリン)の不振によって、のれん代など1140億円の減損処理をするためだ。
粉飾決算に揺れる東芝は、M&Aの負の遺産をどう処理するか注目されている。再生に向け大リストラを実施し、16年3月期は7100億円の最終赤字を見込んでいる。グループ子会社の東芝テック(東芝が50%出資)が12年に米IBMから買収したPOS(販売時点情報管理)事業の、のれん代の価値が下がったと判断し、15年4~9月期の連結決算で696億円の減損損失を出した。
減損対象としてもっとも関心が高いのは、06年に買収した米原子力発電大手ウエスチングハウス(WH)だ。これまで東芝はWHに関する数字を公表してこなかったため、東芝の“ブラックホール”といわれてきた。WHについては、過去に買収した際ののれん代が3000億円以上ある。減損テストの結果によっては、巨額な損失を計上しなければならないはずだが、16年3月期ではWH問題を先送りしている。WHを処理すると最終赤字が8000億円を突き抜けてしまうからではないかとの見方もある。今後、東芝がどのように処理するのか注目されている。
(文=編集部)