(「オリンパスHP」より。)
米ブルームバーグ(12月21日付)は、『ニューヨークの連邦地検のプリート・バラーラ検事正は「チャン・ミン・フォン容疑者は、数億ドルの資産が関係する国際的な詐欺に関与し、手厚い報酬を得たが、それにはオリンパスが監査法人や株主を欺き、大掛かりな不正会計を何年にもわたって続けることを可能にする狙いがあった」と指摘した』と報じた。
FBIによると、少なくとも04年から10年にかけて、チャン容疑者はこの不正に関与しており、本人も容疑を認めているという。オリンパス事件に絡んで海外で逮捕者が出るのは初めてのことだ。チャン容疑者の逮捕はオリンパスに衝撃を与えた。日本では完全に終わった事件と考えられていたからだ。
チャン・ミン・フォン容疑者の具体的な容疑内容は、オリンパスが投資した金融商品を扱うファンドを管理し、オリンパス幹部の指示で、同社管理下の投資法人にこれらの金融商品を移し替えるなどの「飛ばし」に関わったというものだ。チャン容疑者は、95年から04年まで2つの金融機関に在籍し、オリンパスを担当。オリンパスから1000万ドル以上(約8億4000万円以上)の報酬を受け取ったとされている。
オリンパス事件の当初からチャン容疑者の存在は知られていた。オリンパスの損失隠しの実態を調べた第三者委員会の報告書に、外部協力者として、野村證券OBの中川昭夫被告、横尾宣政被告(2人については後述)、米国在住の佐川肇氏とともに、チャン容疑者の名前が出てくる。「山田及び森が、1998年ころ、受け皿ファンドを流す資金調達先を探す中で、中川を通じてコメルツ銀行シンガポール支店の紹介を受けた際に知り合った人物」と記載されている。
チャン容疑者のシンガポールグループには、和光証券やコメルツ銀行、HSBC銀行にいた人物がいる。この人物はジェイ・ブリッジ(現アジア・アライアンス・ホールディングス)やトランスデジタル、小杉産業などの経営に関与したことでも知られる。この人物はオリンパスの飛ばしの受け皿となったファンドは「チャンのもので、自分は関係ない」と主張している。
オリンパスの損失隠しは、企業買収や海外ファンドを悪用した巨額粉飾決算事件である。東京地検特捜部は12年3月28日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で菊川剛・前会長(71)、山田秀雄・前監査役(67)、森久志・前副社長(54)、中川・アクシーズジャパン証券元取締役(61)ら4人と法人としてのオリンパスを起訴。同法違反のほか損失穴埋めに利用された国内3社の株式を不当に高い額で売ったとしてコンサルタント会社、グローバル・カンパニーの横尾社長(57)を詐欺罪で追起訴。処分保留になっていた小野裕史・グローバル・カンパニー元役員(50)も起訴した。これで一連の事件捜査は終結した。