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村澤典知「時事奔流 経営とマーケティングのこれから」

危機の企業を1年で蘇らせた「最初の数秒」…グーグル、人々の行動情報を24時間把握

文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング執行役員

グーグルが提唱するデジタル時代の新たな真実の瞬間

 このP&Gの経営改革から10年がたった10年に、グーグルはラフリーの提唱した「第一の瞬間」と「第二の瞬間」を継承した上で、インターネット時代の新しい購買意思決定モデル「第ゼロの瞬間 (Zero Moment of Truth)」を発表。わずか10年の間に消費者の行動はネットにどっぷりと依存するようになり、米国人の70%は商品購入前にネット上でレビューをチェックしており、母親の83%はテレビCMで興味を持った商品についてネットで調べるというように、購買プロセスが大きく様変わりしてきた。

 では、この「第ゼロの瞬間」で選ばれるためには、企業はどのような行動をとればいいのだろうか。グーグルは、「Winning the Zero Moment of Truth」で、以下のようなプロセスを提唱している。

1.Zero Moment of Truth(以下、ZMOT)の責任者を決め、予算を付与する
2.想定顧客と、そのZMOTを発見する消費者が、自社製品をどのように検索しているかを正確に理解する
3.消費者が質問していることに答える
4.ZMOTを最適化する
5.素早く動く

 このように、ビッグデータにより、企業は生活者のニーズが発生する瞬間をタイムリーに捉えることが可能になってきている。一部の通販企業では、前回購入した商品がなくなるタイミングを見計らって追加購入の案内メールを通知するといった「日単位」でのモーメントを推測する取り組みはあったが、それが今やスマホやウエアラブルデバイスの普及によって、通販企業に限らず、多くのメーカーで実践できるようになってきた。

 それも、365日24時間の行動情報を把握できるようになったことで、「時間刻み」「分刻み」でのモーメントを捉えることが可能になってきたのだ。

 マーケティング業界のバズワードが飛び交う激しい変化は当面やみそうにないが、ニーズやモーメントをどう捉えるか、その本質に十分留意することが必要だろう。
(文=村澤典知/インテグレート執行役員、itgコンサルティング執行役員)

村澤典知

村澤典知

インテグレート執行役員、itgコンサルティング執行役員。一橋大学経済学部卒。トヨタ自動車のグローバル調達本部では、調達コスト削減の推進・実行を中心に、新興国市場での調達基盤の構築、大手サプライヤの収益改善の支援に従事。博報堂コンサルティングでは、消費財・教育・通販・ハイテク・インフラなどのクライアントを担当し、全社戦略、中長期戦略、マーケティング改革、新規事業開発、新商品開発の導入等のプロジェクトに従事。A.T.カーニーでは、消費財・外食・自動車・総合商社・不動産・製薬業界などの日本を代表する企業のグローバル成長戦略、中期経営計画、マーケティング改革(特にデジタル領域)、M&A、組織デザイン、コスト構造改革等のプロジェクトに従事。2014年より現職。大手メーカーや小売、メディア企業に対し、データ利活用による成長戦略やオムニチャネル化、新規事業開発に関する戦略策定から実行までの支援を実施。


株式会社インテグレート

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