18時退社、連続9日有給、分厚い手当…でも売上は前年比332%の超優良企業
取材している最中、18時に「お疲れ様でした」という女性の声があちこちから聞こえたかと思うと、一斉に全社員がいなくなった。副社長の丸林綾子氏は、「今日はノー残業デーなんです。『1秒でも残っていたらダメよ』と普段から言っていますから、みんな一斉に帰ったんですよ」と笑顔で語った。
さらに副社長は、こんなユニークなエピソードを語った。
「近所のコンビニエンスストアで、いつも対応が良くてお気に入りの女性店員さんがいたんです。仲良くなって話を聞いてみると、親御さんのために一生懸命働いているということでした。ある時、その店員さんがお店を辞めると聞いたので、私はすぐに『うちの会社で働いて!』とその人に声をかけました。驚いた顔をしていましたが、本当に弊社の社員になってくれたんですよ。
その女性が最近、大きな取引をまとめてきました。ベテラン社員でも驚くような大口顧客からご契約をいただいたのです。お客様に聞いてみると、『真面目で細やかな対応に感動して、この人なら信用できると思ったので契約しました』と言ってくださったんです。私の目に狂いはなかったと思いましたね。本当に素晴らしい女性が入社くれて感謝しています」
そこで、その「大口顧客」にも取材をしたところ、確かに副社長が語ったとおりだった。「女性活用」というお題目を唱える企業は多いが、アースコムほど徹底したところは少ないだろう。同社は今後、社内に託児所を設けるなど、さらなる対応も考えているという。
アースコムの取材を通して、新しい産業の混沌とした現状と、そこからビジネスの王道で突き抜けていく企業姿勢の重要性をあらためて認識させられた。頭ではわかっていても、それを実践できる経営者は極めて少ない。それを淡々と実践し続け、成功している理想像を垣間見た。
(文=鈴木領一/ビジネス・コーチ、ビジネスプロデューサー)