コメ卸最大手の神明ホールディング(HD)が、経営悪化にあえぐ居酒屋チェーンのワタミの救済に名乗りを上げた。
2月8日付で、神明HDはワタミが保有する自社株の一部を14億円で取得する。神明HDの出資比率は4.19%で、ワタミの自社株を除くと第4位の株主となる。神明HDは外食と宅配弁当を柱に、再建を目指すワタミを支援しつつ有力なコメの供給先に育てる狙いがあるとみられる。
ワタミはメニューが豊富で、しかも手頃な値段の総合居酒屋を展開し、一時は“デフレの勝ち組”といわれた。だが、近年は画一的なメニューが飽きられ客足が遠のき、業績が悪化した。
債務超過に転落するのを避けるため昨年12月、黒字の介護事業を損保ジャパン日本興亜ホールディングスに210億円で売却。2016年3月期に130億円の最終利益(15年3月期は128億円の赤字)を計上して黒字転換を見込んでいる。債務超過に転落することは免れたが、外食事業は15年4~12月期の既存店売り上げが7%減と苦戦が続いている。
ワタミは神明HDとの資本業務提携により、国内外の外食事業で協業、宅食事業におけるインフラの相互活用を通して収益の向上を図る。
一方の神明HDは、コメの国内消費の落ち込みが続くなか、環太平洋経済連携協定(TPP)や生産調整(減反)の廃止など、コメを取り巻く環境が大きく変化しているため、居酒屋や宅配の弁当向けにブランド米を安定供給するほか、炊飯済みのパックご飯を売り込むことを検討している。宅配弁当やワタミが売却した介護施設に食事を供給するサービスを続けることから、居酒屋より介護施設を対象としたコメ・ビジネスの拡大を視野に入れていると指摘する向きもある。
ワタミの工場で、神明HDの米飯の製造にも乗り出す。ワタミの弁当工場は全国に10カ所あり、生産能力は1日35万食に上る。生産余力は十分で、これを神明HDは活用する。神明HDの主な取引先のスーパーで、ワタミの宅食向け弁当をパッケージを変えて売ることも検討する。
神明HDは生き残りを賭けてワタミと異業種提携に踏み出したわけだ。歯車がうまくかみ合わなければ、後述するようにカッパ・クリエイトの二の舞になる懸念がないわけではない。
“ブラック企業”との批判が渦巻いたワタミに救済の手を差し伸べた神明HDとは何者なのか。