三菱商事が第2位の株主
神明HDの創業は1902年で、100年を超す老舗だ。50年に神戸精米の商号で会社を設立、法人化した。72年に神明に商号変更、2014年4月に神明ホールディングに社名を変更、15年4月に純粋持ち株会社へ移行。米穀仕入・販売は分社した事業子会社の神明アグリ、神明の2社に移管した。
米穀類の卸業界は東の木徳神糧と西の神明HDが2強。神明HDは全国に精米、加工、物流の拠点を持ち、主力ブランドは「あかふじ米」。15年3月期の売上高は1573億円、営業利益17億円、純利益は28億円だった。年間、50万トン超のコメを扱っており、16年3月期の連結営業利益は37億円を見込んでおり、前年比2.2倍となる。
ただ、人口減などで米穀業界の経営環境は悪化している。そのため外部資本の導入に踏み切り、10年4月には農業に本腰を入れた三菱商事と資本業務提携した。三菱商事は創業家である藤尾一族から議決権のある発行済み株式の17.07%を取得し、筆頭株主で社長の藤尾益雄氏の22.11%に次ぐ第2位の株主になった。
三菱商事は小売りや外食に多様な販路を持っている。神明HDは提携を機に新規需要を創出し、コメの輸出を目指す。
「魚べい」と「かっぱ寿司」の統合に失敗
三菱商事の後ろ盾を得た神明HDは、家庭でのコメの消費量の減少を踏まえて、外食・中食業界へ接近した。実は、回転ずしの再編を主導したのは神明HDだった。
神明は12年、うどん・そば店を展開するグルメ杵屋から、傘下の回転ずし「魚べい」を運営する元気寿司の株式を取得して筆頭株主となった。さらに13年4月、回転ずし「かっぱ寿司」を展開するカッパ・クリエイトホールディングス(現カッパ・クリエイト)と資本提携し、同年11月の株式買い増しによって筆頭株主となった。その後、藤尾氏がカッパ・クリエイトHDの会長兼社長に就任して元気寿司との経営統合を進めた。
しかし、両社の足並みは揃わず14年10月に業務提携を解消。神明HDが保有していたカッパ・クリエイトHDの株式は、居酒屋「甘太郎」をチェーン展開する外食大手コロワイドに売却した。コロワイドは14年末、カッパ・クリエイトHDを子会社にした。
持ち株会社となった神明HDは15年6月、元気寿司の株式を買い増して子会社に組み入れた。コメの国内消費が減る流れのなかで事業拡大のシナリオを描いたが、計画の練り直しを迫られている。
ワタミとの資本提携を機に、神明HDはワタミ傘下の居酒屋チェーンに家族を呼び込むために、元気寿司で採用している寿司の注文レーンを試験的に導入するアイデアを検討している。