交通事故の可能性解消へ…夜中に寝ながら移動も現実に 自動運転普及のインパクト
軽井沢のスキーバス転落事故、大阪・梅田での暴走事故など、痛ましい交通事故が相次いでいる。このような悲惨な事故が起こるたびに、自動車の自動運転に関する社会の関心が高まる。
一方で、自動運転というと、ついつい事故が起きた場合の責任はどうするのか、運転免許はどうなるのか、保険はどうなるのかといった実用化のためのハードルに目がいってしまい、思考停止に陥りがちである。
いまや、実現のためのテクノロジーはすべてそろったといわれており、実用化のハードルがいずれ解決すれば、将来自動運転が本格的に普及することは間違いない。そこで今回は、自動運転が実用化し、一般社会に普及した将来を想像しながら、その先にある未来について思いをめぐらせてみたい。
交通事故の根絶
自動運転が実現すると、いったい何が起こるのか。大きく2つのインパクトがあると考える。ひとつは「交通事故の根絶」、そしてもうひとつが「運転する機会の消滅」である。
交通事故の根絶のインパクトとして真っ先に思い浮かぶのは、交通事故による損失が解消されることだろう。つまり、毎年交通事故で失われる数千人の尊い命と、その数倍いる負傷者、そしてその家族にかかわるさまざまな損失がなくなるのである。
これだけでも十分意義深いが、さらに一歩踏み込んで考えるとほかにも大きなメリットがみえてくる。
たとえば、現在の自動車は「交通事故に遭遇する可能性がある」という前提で設計されている。そのため、万が一事故にあった場合に車内の搭乗者を守るため、硬くて重い鉄板で全体を覆い、さらに多くの安全装置を施しているが、その重量だけでも相当なものになる。
もし、交通事故が起こらないという前提で考えることができるのであれば、これらの常識が一変する。極端な話、車体は風よけ程度の軽い樹脂で十分であり、結果として車体重量は劇的に軽減可能だ。
さらに、車体が劇的に軽くなることで、大きな波及効果も期待できる。たとえば、エンジンの小型化だ。車が軽くなれば今のような大きな排気量のエンジンは必要がなくなり、せいぜい数百CC程度の、オートバイ並みのエンジンで十分になるだろう。また、衝突する心配がなければ、車間距離を小さく取ることができるため、空気抵抗を最小化できる(前方を走る車両を風よけに使える)。そうなれば、さらに燃費が改善されることになる。