もちろん、ファッション衣料品のように顕示性の高いカテゴリーでは、「優越感を持てる」「イメージアップを図れる」「自分への満足感が高まる」などのベネフィットに対する支払い価値も認められていましたが、そうしたカテゴリーにおいても、高品質ベネフィットに支払い価値を感じる消費者は多かったのです。
このことは、消費者は依然として「品質」を重視する傾向にあり、品質の高さが高価格品購入の動機になっていることを示しています。換言すれば、消費者は、高価格品は低価格品よりも品質が高いと考えていることになります。
高品質・低価格アピールの受容性
もしそうであるならば、低価格品は高品質とは認識されないので、「高品質・低価格」アピールは消費者にとって矛盾することになります。しかしながら、このアピールが多くの消費者に受容されている現状を踏まえると、矛盾を感じる以前に、このアピールを額面通りに受け取っていない可能性が考えられます。額面通りに受け取らないとは、当該商品を本当に高品質かつ低価格であるとは思わないということを意味します。
筆者は、このことを確認するため、仮想的な商品広告をつくり、「高品質・低価格」アピールを用いたときの被験者の品質と価格の知覚を、「高品質」のみのアピールや「低価格」のみのアピールを用いたときの知覚と比較する調査を行いました【註2】。
その結果、「高品質・低価格」アピールは、高価格品の広告に用いた場合には「高品質」のメッセージが割り引かれるのに対し、低価格品の広告に用いた場合には「低価格」のメッセージが割り引かれることが明らかになりました。「高品質」と「低価格」という2つのメッセージは、消費者に同時には受け取られないといえます。
ユニクロの評価
それでは、実際に「高品質・低価格」というイメージが定着しているブランドは、消費者にどう認知されているのでしょうか。筆者は、「高品質・低価格」ブランドとして有名なユニクロを対象とし、品質と価格の評価を調べてみました【註3】。その結果、品質評価については、低くはないものの、高級ブランドよりは劣っていること、価格評価については割安感はあるものの、強い割安感ではないことがわかりました。つまり、明確な「高品質・低価格」という認識は確認できませんでした。