携帯電話業界は新手のサービスの導入に意欲満々だ。格安スマートフォン(スマホ)が増えるなか、長期契約が必要な異業種のサービスを提供し、顧客を囲い込む。第1弾がスマホと電気代のセット割引だった。第2弾はスマホと保険のセット。これが大手生保の猛反発を招いた。
先頭を切ったのはKDDI(au)。4月5日から、指定する生命保険に加入すると携帯電話通信料を割り引く「auのほけん・ローン」を始めた。通信料を月200円または500円割り引き、さらに30~500円分のポイントが付く。
auが販売するのは、KDDIが15.95%出資し筆頭株主となっているライフネット生命保険(東証マザーズ上場)の3商品で、掛け捨て型や女性向け医療保険などである。
auはウェブサイトでKDDIと三菱東京UFJ銀行が折半出資する「じぶん銀行」の住宅ローンを「au住宅ローン」として取り扱う。携帯電話とセットで契約すれば月500円相当のポイントを5年間つける。
今年4月から電力とのセット割引「auでんき」も始めており、さまざまなサービスをまとめて提供して顧客確保を狙う。
携帯電話大手にとって、通信料が半額以下の格安スマホへ顧客が流出するのを食い止めることが喫緊の課題となっている。生命保険は加入後の乗り換えが少ないため、セット加入によって自社の携帯を長く利用してもらえるとの思惑がある。
生命保険各社は携帯電話と保険のセット割引に猛反発
KDDIが始めた携帯電話と保険のセット割引に保険業界は猛反発している。
保険業法は、公益性の高い保険で契約者間の不公平が生じないように保険料の割引を禁じている。大手生保側はauの新しいサービスを「保険業法の特別利益に当たる」と指摘している。
同法300条は契約者に対する「特別利益の提供」を禁じている。ポイントの付与は保険業法に触れる販売方法だと指摘。「特典で付くポイントはコンビニエンスストアやレストランで買い物や食事の支払いにも使えるので換金性が高い」と主張している。auは今回のセット割引で「割り引くのは通信料。問題はない」と反論。金融庁は「総合的に判断する」として判断を保留している。
ライバル各社も異業種との連携で顧客囲い込み策を打ち出している。最大手のNTTドコモは9月からドコモショップで保険の販売を始めるが、セット割引には踏み込まない。
店頭で扱うのは医療保険、がん保険、収入保障保険、一時払い終身保険、個人年金保険など30商品。日本生命保険、東京海上日動あんしん生命、損保ジャパン日本興亜ひまわり生命保険、ネオファースト生命保険など8社の商品を取り扱う。