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前川修満「会計士に隠しごとはできない」

三菱自、現状のままの存続困難…倒産や他社の傘下入り等は必至、1千億円規模の赤字

文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表
三菱自、現状のままの存続困難…倒産や他社の傘下入り等は必至、1千億円規模の赤字の画像1三菱自動車・相川哲郎社長(中央)

 4月20日、三菱自動車工業(以下、三菱自)は同社製軽自動車62万5000台について、型式認証取得時に同社が国土交通省へ提出した燃費試験データに不正があることを公表しました。対象車両の型式認証取得に際し、燃費を実際よりもよく見せるため不正なデータ操作が行われ、さらに国内法規で定められたものと異なる試験方法が採られていたことも判明しました。

 これは、昨年9月に発覚した独フォルクスワーゲン(VW)による排ガス規制を逃れるため不正なソフトウエアをディーゼル車に搭載した不祥事と同様に、自動車業界に大きな衝撃を与えました。

VWと三菱自の不祥事の相違点

 実はVWと三菱自の不祥事は、似て非なるものです。というのは、VWの場合には、排ガス規制への違反という環境問題にまつわる不祥事であり、車のユーザーを直接欺くものではなかったのに対し、三菱自のケースは燃費データを改ざんするというもので、ユーザーを直接欺く行為でした。

 これは、三菱自にとって顧客の支持を大きく失う事件です。げんに4月28日付日本経済新聞によれば、不正発覚後に国内受注が半減しているようですが、これは同社が顧客層の支持を失っていることを示すものです。

 ちなみにVWの15年10~12月の売上高は、5万3029百万ユーロで、これは前年同月の5万4740百万ユーロから3%程度の減少にとどまりました。また、16年4月時点における最近の報道によれば、16年1~3月におけるVWの販売台数は250.8万台(前年比+0.8%)となっています(5月2日付「clicccar」記事より)。要するに、VWでは販売台数が減るどころか、若干伸びているのです

 もっとも、日本では排ガス認証不正の影響から、相変わらずVWの販売は前年同月比で約3割減が続いています。しかし、VWの世界全体の販売台数は、むしろ若干増加しています。このように、VWは排ガスの不正によって世界全体における顧客層の支持喪失を招いていません。これは、不正があくまで排ガス規制の問題であり、直接ユーザーを欺く不正ではなかったからでしょう。

 ところが、三菱自の場合は、燃費不正という車のユーザーのガソリン代に直結する不正が行われたこともあって、16年4月の軽販売は前年同月比44.9%減となりました。

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表

1960年石川県金沢市生まれ。同志社大学商学部卒業。公認会計士・税理士・日本証券アナリスト協会検定会員。澁谷工業株式会社、KPMG港監査法人(現・あずさ監査法人)を経て、1992年に公認会計士・前川修満事務所を開業。2006年にはアスト税理士法人を設立し、代表社員に就任。これまで、数多くの経営者や会社員に、セミナーや書籍を通じて決算書の読み方を解説してきた。決算書を通して企業の「裏の顔」を見つけ出す方法とその面白さを知ってもらいたい、との思いから2015年に『会計士は見た!』(文藝春秋)を執筆。『やっぱり会計士は見た!―本当に優良な会社を見抜く方法』は、決算書から「裏の顔」を見出す手法をいかし、優良な会社をいかに見抜くか、さらにそこから日本企業が今後何をすべきか、という視点で著した。

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