確かに、著者からの「アマゾンの在庫が切れている」というお叱りの連絡に頭を悩ます出版社は多いです。それに、せっかく売れてきた本が旬の時期にアマゾンの在庫にないと機会損失も大きい。だが、多くの小零細出版社にとって、アマゾンとは話をする伝手もなく、唯一の連絡手段である「ベンダーセントラルのお問い合わせ」でも、ほとんど返信がありません。そうしたなか、アマゾンとの連絡手段ができる上に、こうした悩みまで解決できるのであればありがたいという思いで参加した出版社は多かったと思います。
「本を読む人は増えている」との仮説
C氏 村井氏の話の後に、書籍事業本部の男性が壇上に立ち、「出版市況とアマゾンの概況」について説明しました。新刊の紙の出版市場が減少するデータを示しつつも、ブロガーのChikirinさんが発表した「急成長する読書市場」のデータを用いて、「書店の販売冊数」「図書館の貸出冊数」「ブックオフの販売冊数」の2012年の合計冊数が00年と比べて2億冊増えていると説明しました。
このデータより、「本を読む人は増えている」との仮説を立てていました。さらに、その仮説を裏付ける証左のひとつとして、アマゾンの電子書籍の年間販売冊数を持ち出し、12年から15年まで前年比30~40%増で推移していると伝えました。
B氏 続けて、アマゾンの自己紹介というか、会社説明が始まりました。同社のビジョンは「地球上でもっとも豊富な品揃え」「地球上でもっとも客を大切にする企業」の2つであり、そのもっとも大事にする客の満足度を支える柱が「品揃え」「利便性」「付加価値」の3つであり、これらを下支えするのが人手をかけずに自動化するという「イノベーション」であるということでした。
担当者は原稿でも読むかのように早口に話していました。おそらく、地球上で最高を目指すと公言するアメリカ人的発想は、「奥ゆかしさ」を美徳とする日本人には馴染まないというか、担当者も恥ずかしくなったのか、まくしたてるように説明していたという印象を受けました。
C氏 さらに、この3つの柱を充足させるために、アマゾンは物流と会員サービスに投資しているのだそうです。アマゾン流に言うと、「フルフィルメントセンター」という倉庫が全国に14カ所あり、出版物はそのうち市川(千葉)、小田原(神奈川)、多治見(岐阜)、堺(大阪)、鳥栖(佐賀)の5カ所に置かれています。上陸当初の市川の倉庫からスタートして物流拠点が拡大することに伴い、当日配送エリアも広がっているとのことです。