(2)についてはまず、どのようにアマゾンから取次へ注文が出されているのかを説明しました。基本的にアマゾンは、新刊も既刊本も自動発注でシステム化しています。取次への発注は2種類あって、ひとつが「スタンダード発注」、もうひとつが「取寄せ発注」。「スタンダード発注」は毎日午前中に行われており、最初に日販、なければ大阪屋などの順番に取次に注文が飛び、要望数の在庫があれば即日出荷され、翌日までにアマゾンの倉庫に入るそうです。
各取次の在庫にない場合は、再度日販に注文が飛び、そこから出版社への注文に回されるのが「取寄せ発注」です。ただ、日販がどのタイミングで出版社に注文を出し、いつどのような回答を出版社から受けたかは、アマゾンはまるでわからないそうです。
取次の限界を指摘
A氏 ここがひとつのポイントでした。取寄せ発注の入荷率が50%で、搬入リードタイムが8~16日かかるというのです。アマゾンからすると、在庫ステータス上は存在する商品が結局は半分しか調達できない、この「取寄せ発注」が悪玉だと言いたいようです。それで、彼らは最終的に調達できない商品を数値化して「欠品率」「もったいない率」と表現していました。
アマゾンの出版社売上順位で150位までのアマゾンに貢献している出版社は、151位以下のそうでない出版社と比べて欠品率が低く在庫引当率も高い、小零細出版社は損していると暗に訴えていました。ハッキリいえば、150位以内の出版社は直取引している出版社や大手出版社なのだから、欠品率が低いのは当たり前の話。ここで大げさに「もったいない感」を出して、小零細出版社をあおっているところがアマゾンの巧妙なところです。
さらに、今年1月1~21日の書籍・雑誌部門の引当率と欠品率が昨年よりも悪化したとグラフで説明しました。その理由について、「アマゾン全体の物流が増えて、取次のキャパシティが限界にきているからだ」と言うのです。ここまではっきりと既存の取次流通の限界を指摘するとは驚きでした。おそらく、出版社に取次流通一辺倒では対アマゾンの売上を上げることはもう難しいと印象付ける狙いだったのでしょう。
これだけもったいない感をあおった後に、「この機会損失を改善できる可能性がある。大幅な売上伸長ができる可能性がある」とあおりにあおって、第2部へと話が続きます。そうです。本題である直取引システム「e託販売サービス」の説明です。
(文=佐伯雄大)
※後編に続く