また、会員サービスとしては、年会費3900円の「プライム会員」向けのサービスを強化しているようです。会員になれば音楽や映画が見放題・聞き放題というプランを開始したほか、会員限定のセール「プライムデー」も実施しているそうです。このプライム会員数は前年比50%増と伸びており、プライム会員1人当たりの本の注文冊数は15年で前年比1.7倍にもなっているそうです。
それらの結果として、アマゾンの書籍・雑誌、マーケットプレイス、Kindleといった本にまつわる売上が伸びていると。また、返品率も5~7%と、40%前後といわれる出版市場の返品率よりも格段に低いことを強調していました。それが可能なのも、複雑なアルゴリズムを用いたアマゾンの自動発注の仕組みが優れているからだと自慢していました。
アマゾンの売上構造
A氏 次は戦略企画部の男性と女性の社員が出てきて、出版社役とアマゾン役に分かれて、アマゾンの売上構造の仕組みなどを説明しました。売上構造については、下記がその数式だと説明しました。
・売上(アマゾン)=閲覧数(リアル書店でいう来客)×購買率×商品の値段
アマゾンはこの真ん中の「購買率」が売上への影響がもっとも大きく、注目している数値だと言いました。この購買率は「商品情報」や「在庫」「マーケティング」によって変化する数値で、なかでもモノがなければ購入できないという理由から、購買率をもっとも左右するのが「在庫」だと強調していました。
それを測る指標を「在庫あり率」といい、この考えに沿って在庫を管理しているようです。そして、この「在庫あり率」を上げる一番の手段が、「搬入スピードのアップ」だと説きました。
C氏 こうした売上構造を説明した後、前述した(1)「自社に在庫があるのに、なぜアマゾンで在庫切れになっているのか?」、(2)「急な需要で在庫が切れた。どうしたらすぐ在庫ありになるのか?」という疑問に回答しました。
(1)への回答は、「在庫ステータスが影響している」でした。在庫ステータスというのは、取次と出版社による「本の受発注システム」において、この商品は在庫があるのかないのか、その商品の状態を示す数値のことです。「在庫あり」であれば「11」、「絶版」であれば「34」という具合です。アマゾンの場合、この在庫ステータスが「11」、「12」(出庫部数調整中)、「21」(在庫僅少)の商品のみを取次に発注しているそうです。裏を返せば、これ以外の在庫ステータスが付いている商品は、アマゾンは発注しないということです。そのため、出版社は取次と在庫ステータスの更新をリアルタイムで行うべきだと言っていました。
ただ、取次は、絶版商品もなんでもかんでもアマゾンは注文してくるとも言っていました。アマゾンの主張を信じるとすれば、その原因は小零細出版社にもある可能性があります。在庫ステータスを管理していないため、古い商品が「11」(在庫あり)のままになっている可能性が考えられます。実際に、ある小出版社から「在庫ステータスってどうやって変更するの?」と聞かれたこともありました。