小林幸子、なぜ奇跡の復活劇?自らデジタルを核に「変化」し、新たな顧客を獲得
華麗な変身で復活を遂げた小林幸子
2015年大みそか放送の『第66回 NHK紅白歌合戦』に、実に4年ぶりに小林幸子が出場した。『紅白』といえば、小林幸子。小林幸子といえば、あの巨大でド派手な衣装。どんなド派手な衣装で登場するのか楽しみにしていた方も多いのではないだろうか。
4年ぶりとなる今回は、その期待を裏切らないド派手な衣装に加え、ニコニコ動画(ニコ動)のように、ユーザーからのコメントを歌唱中にステージ上のスクリーンに表示させるなど、デジタルコンテンツを融合させた新しい演出を見事にやってのけ、インターネットを活用して進化した新たな小林を垣間見ることができた。
小林への注目の高さは、そのツイート数からもうかがえる。Twitter TV Japanが『紅白』の翌々日に発表した結果によると、放送開始1時間前から終了30分後までの1分間のツイート数(TPM)は、小林が登場した時間帯が6万654TPM(1秒間に平均1,000ツイート)と、クライマックスである「紅組優勝」の瞬間や、「嵐×スター・ウォーズ」などの瞬間をおさえて圧倒的な1位に輝いた。まさに、「ラスボス」(ゲームの最後に登場するボスキャラ。ニコ動を中心にこう呼ばれている)の愛称にふさわしい小林への注目度だったことがわかる。
小林幸子から学ぶ、デジタル変革の3つのエッセンス
小林は所属事務所とのトラブルなどが重なり、12年からは『紅白』をはじめ表舞台からしばらく遠ざかっていた。しかしその間、ニコ動やコミックマーケット(コミケ)など既存の演歌歌手とは異なる領域で精力的に活動することで、若年層を中心に「ラスボス」の愛称で親しまれるようになり、今では登場する度に何千人もの若者から「ラスボス降臨!」と拍手喝采を浴びるようになった。
この小林の鮮やかな復活劇は、演歌界やエンタメ界だけでなく、多くの日本企業が直面しているデジタル変革(デジタル化によって既存の事業領域や提供価値、業務プロセス等を抜本的に変えること)を実現させる上で学べる点は多い。そのエッセンスは、「顧客のいる場に自ら赴く」「コンテクストに合わせて価値をチューニングする」「顧客起点で垣根(かきね)を越える」の3つだ。それぞれ、具体的に説明していこう。