なぜバフェットは投資で高収益を達成し続けられる?なぜノウハウ公開でも他の人は失敗?
一方で、自身のアプローチについては以下のように解説しています。
「当社も効率性を追求し、官僚制を嫌う。しかし、目標達成のために、当社が選択するアプローチは、肥大化を回避し、コストへの意識が高く、高い効率性を実現するCEOが経営する企業を買収することである。買収後の当社の役割は、そうしたCEOが経営のパフォーマンスと仕事から得られる喜びを最大化する環境を準備することだけだ。(中略)当社では、大幅に権限を委譲した分散経営を行っている。(中略)当社では、(アクティビスト型のアプローチが有効となる)チャンスは他人に譲る。当社では、友好的な案件にしか手を出さない。」
日本においては「スチュワードシップ・コード」により投資家による企業に対するエンゲージメント(目的を持った対話)が推奨されていますが、バフェットですらやろうとしないことを日本の投資家が実施することによって、どのような結果が得られるのかが非常に楽しみなところです。
企業による投資の重要性
バフェットは、投資の世界で広く利用されるEBITDA(営業利益に償却を足し戻した利益)に批判的ですが、今年の「株主の手紙」においても、投資の重要性という観点からこの点について触れています。EBITDAはキャッシュフロー指標として利用されますが、償却を足し戻す一方で投資額を差し引くことをしません。ビジネスが競争優位性を少なくとも維持するためには、投資が必要であり、その分キャッシュフローが減少するはずです。バフェットは、償却を足し戻すことに関しては次のように述べています。
「減価償却費はより複雑なテーマではあるが、ほとんどの場合実際のコストである。当社においてはまさにこの考えが当てはまる。」
また、減価償却費と投資の関連について次のように述べており、私は彼の意見に同感です。
「投資を減価償却費よりも低く抑えながら当社のビジネスの競争力を維持できればと願っているが、51年間にわたり実行する方法は見出せない」
結局、投資の世界では(最近は経営の世界でも同じになりつつありますが)、都合の悪いものは計算から除外して数字を良く見せるということが抵抗なく行われているのです。さらに悪いことに、経営の世界では投資自体を削減したり、先送りしたりすることも見られるようになりました。5月11日の決算発表においてトヨタ自動車の豊田章男社長が、「昨年は『意志ある投資を進める』と話した。今年は意志が試される一年になる」と述べ、経営に円高などの逆風が吹くなか、投資へのコミットメントを示しました。競争が激化する一方のビジネスの世界において、持続的な投資は不可欠なものなのです。
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