なぜバフェットは投資で高収益を達成し続けられる?なぜノウハウ公開でも他の人は失敗?
リスク
日本でも米国でも上場企業は、リスク要因をリスト化し、それぞれについて説明することが求められています。ちなみにバフェットは、リスク要因リストの投資判断への有効性については懐疑的なスタンスを取っています。リスクに関しては、今年の「株主の手紙」では、昨年に続きコングロマリットの強みを次のように強調しています。
「当社の経営者は、絶え間なく変化する世界において、どのように競争力を高めるかについて日々考えている。チャーリー(注:バークシャー・ハザウェイの副会長)と私も、とめどなく生み出される資金をどの事業に配分すべきかについて真剣に考えている。その点に関しては、当社は1つの産業に特化して選択肢が大幅に限定される企業に対して大きな優位性を持っている。当社には、資金、人材、そして文化があり、前述した逆境を切り開き、さらなる収益力とともに復活することができると私は固く信じている」
リスク対策といえば、リスクヘッジなどのファイナンスを武器にしたリスクマネジメントが重要なように思われますが、人材や文化といったソフトな面にバフェットがフォーカスを当てていることが、彼が投資家だけではなく経営者でもあることを示しています。
以上、今年の「株主の手紙」から4つのポイントを紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。バフェットは、投資家として有名ですが、投資家として経験したことをバークシャー・ハザウェイの経営にうまく活用しています。投資家としての経験が経営に活き、経営者としての経験が投資に活きる、とバフェットはよく言いますが、まさに経営と投資の二刀流です。上場企業の経営者は、バフェットほどではないにしても、ある程度二刀流が実践できないと、株式市場や投資家に翻弄されてしまいます。経営者こそバフェットに学びましょう。
次回からはファイナンス理論について紹介します。
(文=手島直樹/小樽商科大学ビジネススクール准教授)
『ROEが奪う競争力‐「ファイナンス理論」の誤解が経営を壊す 』 投資家を喜ばせる経営が価値創造を妨げる!? ROE目標を8%に設定すると翌日キャッシュフローは増えますか? 株主資本コストを意識すると翌日キャッシュフローは増えますか? 1日に5社の機関投資家と対話をすれば翌日キャッシュフローは増えますか? 社外取締役が複数になれば翌日キャッシュフローは増えますか?