燃費データ偽装の影響で軽自動車の生産・販売を停止している三菱自動車工業が、早ければ7月にも再開する方向で動きだした。当初、国土交通省が燃費データを偽装していた軽4車種の型式指定を取り消す方針を示し、生産・販売の再開は今秋頃にまでずれ込むとの見通しもあった。しかし、生産停止による経済的な打撃も大きいことから、これまで強気な姿勢を貫いてきた国交省も高まる圧力に屈せざるを得なくなっており、関係者の思惑が入り乱れている。
三菱自は4月20日に「eKワゴン」「eKスペース」、日産自動車にOEM(相手先ブランドによる生産)供給している「デイズ」「デイズルークス」の4モデルの燃費データで不正を行っていたことを公表するとともに、これらの生産と販売を停止した。全国の三菱系ディーラーと日産系ディーラーは、ショールームから軽の展示を撤去した。
自動車の燃費は、タイヤの下にある巨大なローラーが回転する「シャシーダイナモ」と呼ばれる機器を使って、国の機関が台上で測定する。実際の走行では風の抵抗やタイヤの転がり抵抗がある。このため、自動車メーカーは新型車を販売するために取得する型式指定の申請の際、モデルごとに走行抵抗データを提出、この数値を加えて燃費を算出する。三菱自はこの制度を利用し、軽自動車の燃費をクラストップにするため、走行抵抗データについて恣意的に低い数値を使って燃費を偽装していた。
偽装が発覚してから、石井啓一国土交通大臣は記者会見で「日本の自動車産業への信頼を傷つけ、ユーザーにも大きな不信感を与え、極めて由々しき事態で誠に遺憾だ」と述べ、三菱自を強く批判。国交省の担当部署も「自動車メーカーとの信頼関係で成り立っている検査制度の信頼を損なうもので誠に遺憾」と述べ、型式指定の取り消し処分を検討している方針を示していた。
取り消された場合、そのモデルは販売できなくなる。こうした燃費データの偽装は前例がなく、国交省も対応に困惑していたが、過去2度にわたるリコール隠しを加えて、3度目の不祥事となった三菱自に対しては厳しい態度を保ち続けていた。
下請けが相次ぎ操業停止
型式指定が取り消されるなどしない限り、現行モデルの生産・販売を継続することは可能だが、三菱自ではカタログに表示された燃費を偽っていたことから、「自主的」に軽の販売を停止、日産も追随していた。国交省も軽自動車の販売停止は「三菱自が自主的に行っているもので、指導したことは一度もない」としていた。それでも仮に正しい燃費データを計測して型式指定を取り直すとなると、時間がかかる。