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百貨店大手の決算短信の次期の見通しでは、百貨店のそごう・西武を擁するセブン&アイ・ホールディングス(2月期決算)は「消費税再増税が予定されるなど、個人消費の動向につきましては先行きに対して不透明な状態が想定されます」と言及していたが、あとは三越伊勢丹ホールディングス、高島屋(2月期決算)、J.フロントリテイリング(2月期決算)、H2Oリテイリングとも言及なし。三越伊勢丹の大西洋社長は今年2月、日本経済新聞のインタビューに「駆け込み需要はそれほどないだろう」と答えている。
情報サービス産業大手の決算短信の次期の見通しでは、最大手のNTTデータも、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、SCSKも消費増税に伴う特需への言及がなかった。複雑な軽減税率の処理が加わるのでそれなりに需要の拡大が予想されたが、小売業の販売系システムや会計システムの改修需要は社業全体からみれば一部で、前回の消費増税前後の需要変動も小売業ほど大きくはなかった。
増税前の駆け込み需要は、好景気の時の需要増に比べると不自然さが目立つ。数カ月限定の売上増のために、ときには無理もしながら在庫を積み増したり、倉庫を借りたり、従業員に残業させたり、臨時で従業員を雇ったりしてコストの増加を招き、「利益なき繁忙」に陥りやすい。多くの日本企業が2年前にそれを思い知ったはずだ。
次の消費増税が先送りになり、バタバタと今期の業績見通しの下方修正を余儀なくされ、その影響で株価が下がったとしても、需要の先食いが消えて次期の反動減を覚悟しなくてもよくなった分、腰を据えて経営戦略を立てて、落ち着いて計画的に取り組める。ここに挙げた業界、企業にとっても、そこで働く人にとっても、駆け込み需要が消えるのは決して悪い話とはいえないだろう。
(文=寺尾淳/ジャーナリスト)
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