マンションの2つの老い
空き家問題は今のところ一戸建てが中心であるが、近い将来、深刻化していくと予想されるのが分譲マンションである。
分譲マンションのストックは、全国で613万戸(2014年末)に達する。マンションの居住人口は1世帯当たりの平均人員2.46(2010年国勢調査)をもとに算出すると1,510万となる。特に都市部においてはマンション住まいの人は多い。築40年以上のマンションは15年時点で51万戸あるが、今後、マンションの老朽化は急速に進んでいき、10年後(25年)には151万戸(15年の3.0倍)、20年後(35年)には296万戸(同5.8倍)に達する。
マンションは時間の経過とともに、建物の老朽化に加えて、区分所有者の高齢化も進んでいく。いわゆるマンションが直面する2つの老いである。総務省「住宅・土地統計調査」(13年)によれば、住んでいる人が60歳以上のみのマンションの割合は、1970年以前の完成では52%、71~80年の完成では48%に達する。
また、マンションの空室率は古い物件ほど高く、71~80年の完成では9.2%、70年以前の完成では11.1%に達する。今後はマンション老朽化とともに、区分所有者の高齢化や空室化が進んで管理が行き届かず、スラム化に至る「限界マンション」が大量に出てくることが予想される。
区分所有者の責任
マンション老朽化への対応として第一に考えられる建て替えは、容積率に余裕があって従前よりも多くの部屋をつくることができ、その売却益が見込めなければ、デベロッパーの協力は得られにくい。また、行政支援の再開発による建て替えにも限界がある。建て替え困難な場合には、区分所有権を解消し敷地を売却して終止符を打つ方法がある。しかし、買い手が現れない場合は、解体費用も捻出できないため、老朽化物件が放置される恐れがある。建て替え、敷地売却はいずれも区分所有者の合意を要する。
区分所有者自身は資金がなく、改修できないが、物件をまるごと買い取って改修すれば、賃貸物件などとして再生できる場合には、ファンドなどによる物件再生の可能性もある。しかし、これもできるのは区分所有者全員から買い取りできた場合である。