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米山秀隆「不動産の真実」

分譲マンションのスラム化、激増の兆候…老朽化と空室多数で管理不能、売却も建替も困難

文=米山秀隆/富士通総研上席主任研究員
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 建て替えも敷地売却も建物再生も難しく、スラム化が進み、放置しておくことが危険になった場合には、現在の一戸建ての空き家と同様に、最終的に誰がそれを解体するのかという問題が生じる。

 一戸建てと同様、その責任を果たさなければならないのは所有者である。しかし、マンションの区分所有者にそのような責任を自覚している人は、ほとんどいない。区分所有者が責任を果たさなければ、最終的には行政が取り壊すという選択肢が必要になる。

 これはフランスで、スラム化したマンションで実際に行われた例がある。この場合、すべての公費解体は難しいため、危険な状態になったものについて実施することになるだろう。つまり、現状のままではマンションの最終的な出口は公費解体となる。

 マンションの場合は、解体には億単位の費用がかかるが、それを納税者全体が負担することになる。これは不公平であり、本来負担すべき所有者が負担するかたちにするには、たとえば、解体費用の積み立て義務付けが考えられる。それが難しいのなら、固定資産税に上乗せするかたちで解体費用を毎年少しずつ徴収し、プールしておく仕組みも考え得る。

 建て替えの難しさを直視し、建て替え以外のマンションの出口をどのように整えるべきかを真剣に検討しなければならない段階に入っている。

東京都の取り組み

 
 この問題は、最終的には行政による介入が必要になる可能性が高いが、まずは未然の予防措置をとることが必要になる。区分所有者が管理組合を機能させ、維持修繕に責任を持つことが基本となる。

 区分所有者にとっては、適切な維持修繕を行い、マンションの資産価値を維持できれば、売却しようと思った場合、買い手がつきやすくなるメリットがある。資産価値のあるマンションは、リバースモーゲージ(生前にマンションを担保に資金を借り入れ、死後にそのマンションを売却して返済)などの仕組みも活用しやすくなる。そのマンションを新たに購入したいという人がいる限り、マンションスラム化の可能性は低くなる。

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。1989年同大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研等の研究員を歴任。2016~2017年総務省統計局「住宅・土地統計調査に関する研究会」メンバー。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『世界の空き家対策』(編著、学芸出版社、2018年)、『捨てられる土地と家』(ウェッジ、2018年)、『縮小まちづくり』(時事通信社、2018年)、『空き家対策の実務』(共編著、有斐閣、2016年)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社、2015年)、『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社、2012年)など。
米山秀隆オフィシャルサイト

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