さらにBSスカパー!には地上波で絶対できない究極の番組がある。『モノクラ~ベ』といって競争する2つの製品や2つの外食チェーンを、メーカーの承諾なしにガチ比較する番組だ。オーブンレンジのシャープ・ヘルシオとパナソニック・ビストロの対決や、洗剤の花王とライオンの対決、殺虫剤のアース製薬対KINCHOの対決などをガチで行い、実際にテレビの番組内で主婦がどちらを選ぶのかを明白にしていく。
これを地上波でやった場合、民放ならスポンサーからのクレームで成立しないし、NHKなら中立の立場で商品名などとうてい表示できない。
とにかく地上波から消えてしまった視聴者からクレームが来そうな楽しい企画や、スポンサーが絶対につかないような番組が、このチャンネルでは目白押しなのだ。
スポンサーに頼らない
一般のテレビから消え去った絶滅種である「おもしろい番組」が、なぜBSスカパー!という、失礼ながら“辺境”のようなテレビ局にこれだけ生息しているのか。
その理由は、BSスカパー!自身が認識している通り「スポンサーに頼らないテレビ局だから」である。スカパー!の加入者からの収入で成り立っているテレビ局なので、スポンサーの顔色を気にする必要がない。お金を払って見たい視聴者に、見たい番組を届けるビジネスモデルなので、視聴者のクレームを気にする必要もないのである。
さて、地上波から面白いテレビ番組が消えてしまって久しい。その最大の理由が、一部視聴者からのクレーム電話である。それも以前のようにテレビ局にかかってくるのではなく、スポンサー企業に直接クレーム電話がかかってくる。
「あんな番組に提供をしている御社の気がしれない」といったクレームが重なると、スポンサーがテレビ局に「なんとかしてくれない?」と優しく訴えることになるのだが、その繰り返しでおもしろい番組のとがった部分がどんどん削られていってしまうのだ。
これはいろいろな人がいろいろなかたちで問題提起をしている現代社会的な課題なのだが、要するにインターネットやソーシャルメディアの発達で一人ひとりの個人に力が移ってしまった結果起きてしまったひとつの社会現象だ。
強くなった個人によるクレームは、個人が弱かった時代のクレームとは違うパワーを持つようになった。そのことで、テレビ番組のおもしろさが削りとられていく。これは現場の創意工夫ではなんともならない構造的な問題なのだ。