そう分析してみると、現時点でBSスカパー!だけにおもしろい番組があるという事実は、テレビの未来に対して一定の示唆を与えてくれる。要は個人がスポンサーを攻撃するという構造から離れることができれば、テレビ番組は以前同様におもしろくつくることができるのだ。
10年後のテレビ業界を占う問題
その方向でおもしろいテレビ番組をつくろうとした場合、取り得る選択肢は2つある。ひとつはスカパー!同様に数百万人の加入者を集めることによって、スポンサーの指図を受けない立場を確立すること。
その点でいえば、又吉直樹の『火花』を独占ドラマ化したNetflix(ネットフリックス)などインターネット上の動画配信サービス会社は、この方向でBSスカパー!と競合しながらお互いにおもしろい番組づくりの火花を散らす戦いを始めることになるだろう。
そしてもうひとつの方向は、特定のスポンサーに依存しないかたちに地上波のテレビ番組のビジネスモデルを変えることだ。
テレビと違ってネットはおもしろい。テレビでは放送できないようなきわどくておもしろい情報がたくさんある。それが何かというと、ネットのページには固定のスポンサーがついていないからなのだ。
テレビのように番組提供者がいて番組がつくられるのではなく、先にインターネットのページが作られて、その人気に乗りたい企業があとからスポンサーとして広告枠を買って配信する。それもネットの場合、ページを見にくる人によって表示される広告は毎回変わる。
これと同じような収益モデルが未来のテレビで可能になれば、地上波のテレビも再びスポンサーの意向から離れて自由に番組がつくれるようになる。そうなれば、多くの視聴者が内心期待しているような、きわどくて怪しくて不道徳な番組をテレビ局はふたたび復活させるようになるだろう。
そしてこの2つの方向性が真に意味することは何かというと、前者の方向に未来が進めば、未来のテレビ界は動画配信事業者が支配することになり、後者の方向に未来が進めば未来のテレビ界は現在と同じく地上波キー局が支配することになる。つまりまわりまわってこの話は、10年後のテレビ業界の覇権を誰が握るのかという問題にヒントを与えているのである。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)