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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

「質にこだわり過ぎの」コメダ、他社がパクリまくり?でもマネできない謎の超高収益経営

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

真似する競合が続出した「コメダモデル」

 コメダは1968年に個人喫茶店として開業した。創業間もない70年から地元を中心にフランチャイズ(FC)展開してきたが、喫茶王国といわれる愛知県では、しばらく目立たない存在だった。ただし、早くからコンセプトは明確で、特に77年からは競合店との差別化のため、(1)一戸建ての店舗に駐車場を完備、(2)年中無休で長時間営業、(3)コーヒーの味は均一にすると定めた。

 さらに、(4)間仕切りの座席、(5)朝11時まではトーストとゆで玉子が無料でつくモーニングサービス、(6)ドリンクに小袋の豆菓子が付くオマケ、(7)デニッシュパンにソフトクリームを載せた名物「シロノワール」などのパンメニューといったコメダの特徴的コンセプトも確立していった。

「質にこだわり過ぎの」コメダ、他社がパクリまくり?でもマネできない謎の超高収益経営の画像4「シロノワール」
「質にこだわり過ぎの」コメダ、他社がパクリまくり?でもマネできない謎の超高収益経営の画像5コーヒーと豆菓子

 コメダの成功例をみて、近年は模倣する競合が相次いだ。そうした競合が真似したのは(3)以外のすべてだ。たとえば、和歌山県に店舗を展開する「マサキ珈琲」の外観と内装は、極めてソックリだ。コメダの本拠地・名古屋市にある「金シャチ珈琲店」という店も同様だ。興味のある人は検索して比較していただきたい。

 大手チェーン各社も、コメダを模倣した。銀座ルノアールが運営する「ミヤマ珈琲」のバーガーメニューは、コメダによく似ている。導入したコーヒーチケットはコメダと同じ「9枚つづり」だ。ちなみに名古屋の喫茶店のコーヒーチケットの基本は、11枚つづりで10枚分の価格という電車の回数券方式で、9枚つづりは少数派だ。また、コーヒーに付く豆菓子が人気のコメダを見習い、ミヤマはコーヒーにミニクッキーを付けた。

 ドトール・日レスホールディングスが運営する「星乃珈琲店」には、当初「シロノワール」ならぬ「ホシノワール」というメニューがあった。コメダのデニッシュパンとは違い、パンケーキを用いたが、上にソフトクリームを載せた見た目はソックリだった。ちなみに各社ともに店名に「――珈琲」を漢字で入れた点も共通している。

 余談だが1980年代以降、ドトールコーヒーショップの店舗拡大で、街の喫茶店が駆逐されていった。当時、ドトールの経営者は「ウチが1店出せば周辺の喫茶店100軒に影響が出る」と豪語した。事実その通りだったが、自ら駆逐した「街の喫茶店型」を、21世紀に星乃珈琲店として積極的に展開するようになったのは、歴史の皮肉というべきか。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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