ヤフーの取締役として株主総会に出席した孫氏は「(ビジネスが)マンネリ化しないよう挑戦してほしい」と注文をつけた。唯一のハプニングは、株主総会で取締役に再任され、その後の取締役会で会長の続投が決まったアローラ氏が即刻辞任したことだろう。アローラ氏はヤフーの売却を主張していたのだから、株主総会を欠席したのも当然といえる。この時、すでに孫氏とは別の道を歩き始めていたのということなのだろう。
孫氏は「あと5~10年社長をやる」とコメントしたが、生涯現役で社長を続けることになるとみる向きが多い。「当面、後継者はいらない。邪魔だ」ということだったのではないか。ソフトバンクG社外取締役の永守重信・日本電産社長は「69歳になったらもう10年やると言い出すに違いない」と言い切った。
実は以前から、「アローラ氏が辞めるのではないか」との噂が米シリコンバレーで流れていたのだ。シリコンバレーにはアローラ氏がソフトバンク入りする時にスカウトしたグーグルやモルガン・スタンレー出身の傭兵部隊、「チーム・ニケシュ」がある。ここが噂の発信元だろうといわれている。
電撃退任の前兆が、はっきりと表に出たのは6月20日だった。1月に匿名の投資家グループから届いていた「アローラ副社長の実績や適性に疑問」との書簡に関して、ソフトバンクGは「調査を終了した」と発表した。取締役会の独立役員で構成する特別調査委員会が調査し、書簡で指摘されたような問題はなかったと判断。申し立ての内容について「評価に値しない」と結論づけた。この発表についても、「なぜ、今なのか」という戸惑いが社内にあったという。
アローラ氏の疑惑を否定したソフトバンクGのニュースリリースは、申し立てをした人を「株主とみられる方」、代理人については「株主の利益を代表していると自称している米国の法律事務所」としたが、荒唐無稽な告発なら、特別調査委員会を設置する必要などなかったのではないのか。
この疑惑の火を消すのに、ソフトバンクGはかなりのエネルギーを注いだとみられる。
米証券取引委員会が調査を開始
米メディアによると、書簡では「アローラ氏がIT企業への投資を手掛ける投資ファンドの上級顧問として報酬を得ており、新興企業に投資するソフトバンクGとの間で『利益の相反がある』」と指摘していた。ソフトバンクG内でのアローラ氏の仕事ぶりについても「実績に乏しく、疑問の余地がある取引がある」と批判していた。