縮小するブライダル市場をインバウンド婚が活性化
若者の結婚願望が低下し、婚姻件数も減少した。当然、ブライダル市場も縮小傾向が続いている。矢野経済研究所が15年12月から16年2月に行ったブライダル市場に関する調査では、15年のブライダル関連市場規模は2兆5480億円で前年比99.3%だった。挙式披露宴、披露パーティ市場、ジュエリー、新婚旅行など関連市場の縮小が大きな要因だという。
「婚姻件数の減少が続く時代状況のなかで、結婚式のあり方も大きく様変わりしています。バブル期のような派手な披露宴は影を潜め、最近は少人数婚や、婚姻届を出して披露宴は行わない“ナシ婚”が増えています。ある調査では、結婚して披露宴を挙げたカップルは6割弱だったというデータもあります。ブライダル産業にとっては頭の痛い状況です」(サービス関連企業を取材しているジャーナリスト)
そうしたなかで、注目されているのが「インバウンド婚」だ。爆買いでおなじみとなったように、アジア人観光客などのインバウンド(訪日旅行客)は近年、急増している。そのインバウンドをターゲットにし、日本国内で結婚式を挙げてもらおうという動きが活発化している。
その先端を行くのは、沖縄の「リゾート婚」だ。沖縄県観光振興課の発表によると、15年の「沖縄リゾートウエディング」の実施組数は対前年比17.5%(2017件)増の1万4175と過去最高を記録した。このうち海外組は、対前年比29.9%(336組)増の1458組となった。
リゾート婚には、チャペルで行うチャペルウエディングのほか、美ら海を背景に撮影を行うフォトウエディングやビーチウエディング、琉装ウエディングなども含まれている。琉装ウエディングとは、琉球王朝時代の正装・伝統衣装を着た挙式のことだ。1999年はわずか200組だったから、実に70倍以上に激増したことになる。
沖縄県の積極的なプロモーション活動により、国内外で認知度が上がったことが成功の要因だ。海外勢は香港と台湾のカップルが全体の約88%。ブライダル関連企業では英語や中国語対応ができるスタッフを揃えるなど、受け入れ態勢を強化している。
「こうしたインバウンド婚は京都や北海道などでも広がっていて、旅行関連業界も新たなニーズの掘り起こしに力を入れています。京都では神社仏閣関係者団体が参加する『和婚受入協議会』が設立され、婚礼衣装で有名社寺をめぐる撮影プランの予約を受け付けています。北海道では雪景色を背景にしたフォトウエディングとハネムーンをセットにした商品などが人気となっています。国内市場が冷え込むなかで、海外客をターゲットにしたインバウンド婚ビジネスはますます盛んになるでしょう」(同)
円高が進み、爆買いが一巡したなかで、インバウンド婚がブライダル業界や旅行業界の救世主となるのか。国内の若者たちの結婚観が冷めていく一方という状況のなかで、関連業界は新たなビジネス需要の掘り起こしに懸命だ。
(文=編集部)