AVが主力だけどディズニーを凌ぐ超優良&巨大複合企業、DMMの「夢の国」経営
それでも、FXやオンライン英会話など、すでに業界トップクラスの地位を確立している事業も多い。13年に後発参入したオンライン英会話(DMM英会話)は、短期間で利用者数がトップレベルまで急増したとともに、雑誌「プレジデント」(プレジデント社)の英語教材・英会話学校ランキングで1位(15年)になるなど、顧客満足度でも高い評価を得ている。
また、モノづくりのための製造・販売のプラットフォームを提供するDMM.makeは、まだ発展途上の段階ではあるものの、1人家電メーカー「UPQ(アップ・キュー)」の代表・中澤優子氏が、4Kテレビやスマートフォン、アクションカメラなど17種類24製品のデザイン家電の開発・生産・販売までをわずか2カ月で実現してヒット化させるなど、プラットフォームを活用した成功事例が出てきている。
亀直(カメチョク)と健全なキャッシュフロー経営
事業展開は、各事業の関連性がそれほど高くない、いわゆる非関連型の多角化事業だ。では、一体どのような方針でこれらの新規事業の参入を決定しているのか。
結論からいうと、「亀直(カメチョク)」と呼ばれている、文字どおり亀山会長への直接提案によるものだ。決まったプロセスはなく、提案したスタッフが亀山会長のいきつけの店などに押しかけて提案する。その内容を聞いて、亀山会長がおもしろいと思ったら事業検討の開始が決定し、そこから半年後の進捗確認まで自由にやってみるという仕組みだ。予算についても良識の範囲内であれば基本的には提案したスタッフの言い値で決定するそうだ。半年後の進捗確認も、利益などの数字で見るわけではない。その半年間の取り組み方など、人となりを判断して決める。
投資の構造としては、主力のAV事業が圧倒的な収益を獲得し、そこで獲得した資金を成長性が高いと見込める業界に積極的に分散投資している。非上場企業のため、詳細は不明であるが、あるメディアでの亀山会長のインタビューによると、本業がAV事業であったため銀行などから十分なお金を借りることができず、結果として身の丈に合った投資をする健全なキャッシュフロー経営ができているそうだ。
亀山会長の築く、夢の国
派手な事業投資とは裏腹に、亀山会長の人材・雇用観には、古き良き日本企業のようなものがある。冒頭に、「同じ営業マンが、AVを販売してこいと言われた翌週には、太陽光パネルを販売してこいと言われる」とあったが、これも彼の中では社員の雇用を維持することを最重視した上での方針のようである。