出光興産は8月15日、創業家が昭和シェル石油との合併に反対している問題をめぐり、関大輔副社長が都内で記者会見を開き、「2015年7月に昭和シェルとの経営統合を発表した際には、創業家は了解していた」と説明した。同年12月には「取締役のポストを求めてきた」ことも暴露した。創業家側の発言・行動の矛盾点を指摘しつつ、「協議の再開を要請する」と力説した。
15年12月に、出光昭介名誉会長が月岡隆社長に宛てた書簡の中で「創業家出身者1人を取締役にするよう求めた」という。創業家の代理人弁護士は、昭和シェルとの合併反対は「条件闘争ではない」と主張した。
昭介氏には長男の正和氏、次男の正道氏がいる。2人はそれぞれ出光の発行済み株式1.5%を保有する大株主である。兄弟とも慶應義塾大学を卒業後、出光に入社した。
出光の創業者、出光佐三氏の実業家としてのDNAは、孫には遺伝しなかったようだ。正和氏は一時、役員への登竜門である神戸支店長に抜擢され周囲もサポートしたが、期待に応えるような実績は挙げられなかった。47歳になった現在は、出光創業家の資産管理会社である日章興産の代表取締役に就いており、出光本体では仕事をしていない。出光の需給部に勤務する次男は2歳下の45歳で、いまだに管理職になっていない。
関氏は8月15日の記者会見で、これまでの創業家との協議の経緯を説明した。14年秋から継続的に状況を説明し、15年7月に昭介氏から「それで結構」と了解を得ていたとしている。
15年12月に昭介氏と代理人の浜田卓二郎弁護士が創業家の「見解」に関する文書を月岡隆社長に提出。その中で、創業家の持ち株の希薄化や人員削減、出光の社名が消失する可能性について懸念を示し、出光家から取締役1人を登用するよう求めたことを関氏は公表した。さらに、「(合併しないで)経営難に陥った際には、無配にして従業員の賞与をカットする」ことを提案したという。これが本当なら創業家の見識を疑わざるを得ない。