原因は、成型肉の角切りステーキだった。今回の店のハンバーグは、牛のひき肉である。ひき肉は、究極の成型肉といえる。O157は、牛肉の表面に付着していることが多い。ミンチされたひき肉は、表面に付着していたO157がどこに入ったかわからない。だからハンバーグは中まで十分に火を通さなければ食中毒の危険性が高くなるのだ。
厚生労働省は、「結着・成型肉、ひき肉調理品等の病原微生物による汚染が内部に拡大するおそれがある肉については、中心部の色が変化するまで、十分に加熱をしてください」という指導をしている。
ハンバーグの危険性について、著者は15年5月27日付同連載記事でも指摘をしているが、国は「ハンバーグを中まで十分に加熱しなければならないことは、国民が周知しているはずだ」として規制対象から外している。
しかし、前出テレビ番組では、ハンバーグを十分加熱しないで食べるところを堂々と放送をしている。影響が大きいテレビ番組で食肉の生焼けを「グルメだ」「おいしい」と推奨すれば、生焼けで食べる人が増える懸念もある。
過去には死亡事件も
食肉の生食で忘れてはいけないのは、2011年に「焼肉酒家えびす」で起きたユッケの食中毒だ。2人の6歳の子どもを含む5人が亡くなっている。今年もゴールデンウィークに開催された肉フェスで、加熱不十分の鶏肉で食中毒が起きている。
日本人は「過去のことを教訓とするのが、非常に苦手な民族」であるとともに、どんなことが起きても「自分の家族に限ってそれは起きない」「すべては他人事で自分には降りかからない」と安易に考える傾向がある。
現在、生レバーは禁止され食べることができない。ユッケも条件付きの許可で値段が高くなり、庶民の口には入らない。ところが、生ひき肉は行列ができる有名店でも堂々と提供され、テレビ番組ではグルメだと絶賛されている。これでは、「生ひき肉ならいいのか」と勘違いする消費者や事業者が出てくる危険性がある。
食はマスコミ、特にテレビが取り上げることで信用度が高くなり、人気が出て多くの消費者が、何も疑わずに食べる機会が増えていく。消費者や事業者への啓蒙も大切だが、それ以前に、マスコミにも「食の安全」を教育する必要がある。
さらにハンバーグも、十分加熱しないで提供することを法律で禁止すべき時期にきているのではないだろうか。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)